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昼食の時間になった。みんな揃って食堂に行くなか、パーソンだけが自分の席に座っていた。
「パーソン様、一緒にお食事はいかがです?」
「あら、マリー様も弁当なのですか?」
「へ?」
すると、パーソンは鞄の中から弁当を取り出した。ふろしきにきちんと包まれている弁当が机の上に出された。
「あ、あら、パーソン様は弁当なのね!」
「そうなんです。弁当の方がお金がかかりませんから。」
そういって、パーソンはふろしき包みを外して、弁当箱を露にする。そして、「私弁当じゃないから」と言って、私は教室から出た。
(弁当を持ってくるなんて珍しい。きっと節約してるんだろうな。 )
そう思いながら食堂に入り、いつも食べているフィッシュフライときのこスープを頼む。そして、いつもの特等席に座り、食事をしようとした時、近くの席からとある会話が聞こえた。
「そういえば、今日いらっしゃった転校生、すごく一般人って感じでしたわね。」
「わかりますわ。無理やりお嬢様口調で話してるって感じ。」
「なぜあんな方が私たちのクラスに入ってこられたのですかね。 」
その会話はとても聞きたくないものだった。私は、その会話に割り込むことなく食事を終えた。そして、時間が経ち放課後になった。
「マリー様、いっしょに帰りません?」
「いいですわね。行きましょうか。」
セローナと一緒に校門を通過しようとした時、前にパーソンがいた。私は勇気を出してパーソンに声をかけた。
「あら、パーソン様。こんなところでどうかしたのですか?」
パーソンは困った表情で私に言った。
「あら、マリー様。実は、鞄の中に入れたはずの弁当がなくなってしまったのです。」
「あら、それは大変!探しましょう!」
私は咄嗟に出てしまった言葉に少し驚いたが、かき消すことはできなかった。私はセローナに謝罪の気持ちを込めて一礼をし、パーソンと教室に戻った。すると、教室には食堂でパーソンのことを酷く言っていた三人組がいた。
「パーソンさん、まさか弁当を食べていたとは…。」
「弁当だなんて、こんなお嬢様学校に持ってきていいものじゃあないですわ。」
「私たちが捨てといてあげましょう♪」
そういって、ハサミでビリビリに切り裂かれたふろしき包みと、それに包まれた弁当を、教室内のゴミ箱に投げ捨てた。
「許せない…。」
私は知らぬ間にそう呟いていた。三人組が教室から出た後、私たちは教室に入り、ゴミ箱から弁当を拾った。
「ま、マリー様、ありがとうございます。」
「いいのよ、気になさらないで。きっとあの方達はあなたの美貌に嫉妬しているのよ。」
パーソンは、弁当をギュッと掴み直し俯いた。すると、パーソンは顔を上げて言った。
「わ、私の過去の事について、話しても宜しいでしょうか。」
私は少し戸惑ったが、すぐに聞く姿勢をとった。パーソンは少し声を震わせながら、自分の過去について話した。
「私、小学生の頃から身長が高くて、声も低かったのです。ですから、よく嫌がらせを受けていたんです。」
パーソンは続けて言った。
「先生や親に相談しようとも思ったのですが、こんな些細なことで相談されたら、忙しい身からすれば非常に面倒くさいことではありませんか。」
パーソンは少し目をうるうるさせながら、少し、声が小さくなりながら言った。
「ですから、私、…いやがらせを受けていたことを、ずっと、我慢して来たのです…。…でも…、」
パーソンは大粒の涙を震えた声で言った。
「今日、マリー様が、私を助けてくださった…っ。本当に、…本当にっ……、感謝してます、っ。」
パーソンは涙を流しながら、深く一礼をした。私は戸惑いながらも優しく言った。
「いいのです。私がやりたくてやったことなのですから。」
私は少し緊張しながらも、声を一直線にして、パーソンに伝えた。
「私たち、お友達じゃないですの。」
パーソンはその言葉に顔をゆっくり上げた。パーソンの表情は驚いていたが、瞳は嬉しさでいっぱいだった。
「ほ、本当ですかっ…?」
「えぇ。貴方が友達じゃないとおっしゃっても、私は貴方を友達だと思っています。パーソン様っ。」
私はパーソンにそっと近づき、手を優しく、でも、しっかりと握りしめた。
ー続くー
ご視聴いただきありがとうございました。