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きっと優しい人だったのだろう。間違いなく美しく、幸福であるべき人だった。

「さあ。それを渡せ」

差し出せば命は助かる。だが私たちの答えはNOだ。こんなものを使い続けてしまえばこいつも危ない。事情を聞いたからこそのNOだ。その想い自体は悪くないが、結末がハッピーとは限らない。純粋も度が過ぎれば行くところまで行ってしまうというもの。

「何度も戦って来たんだぞ!お前らみたいに異能力があるわけでもないのに!」

そう突かれると言い返せない。アイドルを始めた時からそうだ。歌もダンスも、演技も キャットウォークパフォーマンス(ファッションショーでランウェイを歩くこと)も、昔から人並み以上にできた。でもそれが私にしかできないことだと思ったことは1度もない。でも、この異能力は私にしかできないことなんだ。ずっとそう思っていた。きっと彼にとってのそれがあの神様からもらった力なのだろうか。確か美六華さんと雪翔さんもそうだ。私たちと出会うまでは自分なりの力で戦って来た。そう。異能力があるわけでもないのに。もしかしたら皆とても勇敢なのかもしれない。

「それは僕たちも同じだ。お願い、2人とも聞いて。これからの人生、自分たちだけじゃ解決できない問題に、君たちは直面することになる。苦しみや寂しさを感じた時の自分の気持ちの伝え方。キツイ試練に挑むことになった時の心の持ち方。己を信じ、他者と信じ合う勇気の持ち方。それらは2人の世界に閉じこもってるだけじゃ解決しない、人との繋がりでしか得られない経験値なんだ」

「大事なのは今を生きること。未来にいけばできることが分かることもあるよ!」

確か陶瑚から聞いたことがある。雪翔さんはここ最近、活動を休止していた。理由が確か、喉の手術…だったか。陶瑚もやったらと心配していた。もしかして雪翔さんと美六華さんが明日へ行こうとしている理由は…。

「だからほしかった。彼女のために誰にも踏み躙られない力が!」

「それはその人の気持ちじゃなくて、貴方の気持ちでしょう?その人のことを想って…想いすぎて…その人を縛りつけてる!」

あーあ。言っちゃった。というようなオーラを送る私。そして気づかない磨輝。

「あたしそういう気持ち、覚えがあるわ。あたしも同じようなものだったから…」

「は?何も失ったこともないくせに適当なこと言う な!」

「…あ?」

オワタ。流石に言っていいことと悪いことはある。

「あたしが…何も失ったことがない…? 腑抜けてんじゃないわよ!」

「待って、いや、腑抜けた奴にビンタはこの手のシチュエーションの世論だけど!お姉が殴ったらワンチャン耳、聞こえなくなる」

幼い頃からの友人であり恋人でもあった彼は、高校の時に事故で亡くなり、彼女が師匠として慕っていた先輩は、捨てられていた猫を拾い、マダニに感染して命を落とした。あんなの何度、経験したって慣れない。誰も何人もない。磨輝も物憂げであまり話をしたくなさそうだったが、頑張って話してくれた。

「あー。どうしよう、結構、ひどいこと言っちゃったかな…」

「言っちゃったって?」

「それはその人の気持ちじゃなくて貴方の気持ちだーって…」

「うーんどうだろうね…」

「僕、人の気持ちとか分かんないから…」

「人の気持ち分かる人なんていないんだよ。分かった風な気になってそれっぽいことできる人が多いだけ」

気持ちって難しい。そういえばずっと思っていたが、アイツ、ずっと何か苦しそうじゃないか?私たちの話も本当に聞こうとしないし、いやそれは私たちが強引すぎただけかもしれないが、もう限界が近いことは自分でも悟っているのだろうか。

「気づいてるでしょ?その力を使うと貴方にもガタが来る。」

あのアイテムは神の力で作られたもの。大いなる力には大いなる代償も伴うと?これではアイツ自身も危ない。もはや少し前にあったばかりの私たちが首を突っ込んでいい話なのだろうか。彼…和雅ももう割と引き返せないところまで来てしまったと思っているのだろうか。もう後には引けない。悩んだんだろうね。親友のことは助けたい。でもだったらどうしたらいいのか分からない。自分に何ができるのか分からない。きっと並々ならぬ葛藤があったに違いない。そしてそれは美六華さんや雪翔さんも。部外者の私たちに言えるのは正論だけだ。私は皆に幸せになってほしい。大事な人を守ってほしい。もちろん和雅にもだ。親友が犠牲になったので今度は和雅が親友を守るために犠牲になってはそれはただの等価交換だ。そういう等価交換に意味があるとは思えない。綺麗事かもしれないが、今はそれしかない。誰も犠牲にならずに済む方法を見つけたい。それができなければ私たちが異能を持って生まれた意味がない気がする。そして何より皆、私たちを信じて頼ってくれたのだ。乗り掛かった船。最後までできることをしていこう。

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