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今回は洋楽
「Just the Two of Us」
をもとに書かせていただきました!!本当に歌詞が素敵で…是非聴きながら読んでみてください🧡ྀི
梅雨。屋根に当たって散る雨の音がうるさい。今日は朝から土砂降りで、夕方の今は庭がぐちゃぐちゃになっていた。
そして、この目の前の男にも梅雨が訪れていた。
薄暗い部屋の中で頬に雨粒を伝わせながら時々揺れる紫陽花は必死に息を整えようとしている。
「はっ、…、ッく、……」
鼻で息を吸おうとする度にぐず、と音が出て次に口で浅く息を吸い込む。
「…落ち着いて、息を吸え」
自分に分からないことなど無いはずなのに、掛ける言葉が見つからなかった。ただ、咽び泣く権兵衛を見ているとこちらまで苦しくて背中を摩ってやる。
「ひゅ、ッ、ひぐ、…はぁ、…ふぅ」
吐く息が長くなって来た様子を見ると上手く酸素を取り込めるようになってきたのだろう。
それでも涙は梅雨の空のように止まることを知らない。目元に溜まって、瞬きの度にぽたりと太ももの上に落ちる。
窓に叩き付けられる激しい雨は、権兵衛の弱々しい息をかき消す程に大きかった。
紫陽花とは雨を好み、雨がある事で育つ植物である。
それは紫陽花が水分を多く必要とするから。英名『ハイドレンジア』もラテン語で『水の器』という意味を持つ。
しかし、雨だけで育つことは出来ない。植物なのだから当たり前に日光がいる。
紫陽花に光はなくてはならない存在
「権兵衛」
「…なんだ」
「雨が降るならば、虹が出ないと面白くないだろう?」
ぎこちなく、目も合わせずに返事をする権兵衛。だが次の言葉を聞いた瞬間に困惑したように自分を見つめた。
「やっと目が合ったな」
「ぁ、」
眼鏡を通さず、直接見るその目は涙で光っているはずなのに奥はどんよりと曇っている。
「……雨の後には虹がある。」
「、さっきから何を」
「だが、雨が降るから虹ができるのではない。雨の後に晴れるから虹ができるのだ。」
「はぁ、?」
目尻にじんわりと残る涙を、親指の腹で掬い上げる。そして瞳の中の雨雲を見た。
そこに虹がかかることを信じて。
「この後の予定は全てこの土砂降りのせいで中止になった。ついでに、俺は暇だ。」
「…ずっとここにいる。」
雨のせいで少し肌寒い部屋。権兵衛は手を震わせる。
そしてまた一筋、一筋、涙が流れた。
マントを脱ぎ、肩に掛けてやる。崩れてしまいそうな背中は突然の重みに震えて、少しずり落ちる。それをまたかけ直して、今度は落ちないように肩を寄せた。
寒がりな此奴のことだ。きっともう指先は冷たくなっている。軽く握られた拳を解いて指を絡めると案の定ひんやりと自分の体温を奪っていく。
時計すら見ず、権兵衛の震えを感じていた。
権兵衛は味のない紅茶を飲んでいた。
味がなくても、何故か飲むのを辞められない心地良さがあった。
「権兵衛!こっちにこい!」
親の顔より見た…ならぬ、親の声より聞いた光士郎の声が中庭から聞こえてくる。
カタッ、と軽い音を鳴らしてティーカップを置く。
「はいはい、どうしたんだ…」
「見てみろ!!」
「これは…虹か」
眩しいくらいに目を輝かせた光士郎の目線の先を追うと、そこには今まで見た事がないほど鮮やかな虹が掛かっていた。
「こんなにはっきりと虹が出ているの初めて見たな…」
大人になって子供の頃よりも空に近くなったはずなのに、虹に興味を惹かれなくなった今。
久しぶりに見たそれは子供の頃と変わらず鮮やかな光を発していた。
「…綺麗」
頭と口が直接繋がったみたいに、言おうとしていなかったのに勝手に言葉になっていた。
雨上がりの葉っぱに着いた水滴がぽつりと落ちて、水たまりに波紋ができるように
心が揺さぶられる。
その時、上を向いていた自分の頬に小さな冷たい感覚。一瞬涙かと思った。
瞬く間に上着に無数黒い染みを作っていく。
「またこの雨が止めば、虹が見れるはずだ」
その一言でこれが雨だと気づく。
光士郎が自分の腕を掴んで早歩きで屋敷の中に連れていかれる。屋根の下に行くまではきっと数秒なのに屋根の下から外を見た時にはもう虹は消えて見渡す限り全て雨だった。
「…そうだな」
「早く晴れるようにてるてる坊主でも作るか?」
「ふは、久しぶりに作ってみるか…ふふ」
振り向いて、自信満々にてるてる坊主なんて言うものだから笑ってしまった。
ひとしきり笑って、また光士郎の方を見ると見た事ない顔で光士郎が微笑んでいた。
「…どうした?」
そう聞いても光士郎は何も答えずにただ更に距離を縮めてくる。そのまま頭の後ろに手を回されて肩に顔を埋めさせられた。
視界が真っ暗になる。
「…ぁ…?」
どうやらさっきのは夢だったらしい。しかし瞼を持ち上げたはずなのに目の前はまだ暗いまま。自分に与えられた情報は雨音と全身包み込む温もり…。
「、あったかい…」
その温もりは絶対に無くならないと思えるほどに安心できるものだった。また目を瞑って、ずっとこの温もりに縋って寝ていたかった。
これは一体なんなんだろう。何も分からないまま、指先は勝手に何かを掴む。
「……は?、?!」
危ない。本当に危なかった。
瞼の隙間から見えたエメラルドのブローチ。これを付けている知人はただひとり…
いくら友達と言えど主人。主人の腕の中で寝ていたなんて…と背中が汗で濡れていく。
そしてさっき掴んだものは光士郎の腕だったらしい。シャツの値段を考えると気が遠くなって直ぐに手を離した。
本当に…やらかした
光士郎は覚醒した意識の中で目を瞑って、腕の中でモゾモゾと動く権兵衛に意識を向けていた。
「、あったかい…」
すこし舌っ足らずな気の抜けた声が雨音に混じって聞こえる。どうやら権兵衛はこの体温を気に入ったようで、腕を柔らかそうな手で握った。だがその手はすぐに離された。
驚いた声を上げた様子を見るに今頃顔を真っ青にして焦っているのだろう。
腕の中から抜け出そうか、抜け出さないか…迷っているみたいに控えめに体勢を変えたり戻したりしている。
お前が抜けようとしたところで、こちらもこの暖かさは大変気に入っている。
抜け出せるなんて思わないことだ。
片目だけを開いて、時計を確認する。短針が刺すのは5の数字。いつもなら起きている時間だが……
権兵衛が動けないくらいに引き寄せて、布団を権兵衛の頭まで被せた。
「光士郎…!おきて、」
布団の中から聞こえる籠った声を遮る。
「昨日は散々付き合わされたのだ、今日は俺の言うことを聞け」
「ぐ…、」
昨日の自分の失態を思い出したのか引かれたかえるのような声を出して縮こまる。
「…分かった、というかいつも聞いてやってるだろ」
布団から覗く口答えする瞳は光で照らされた雨粒のように柔らかく光っていた。
そうしてまた、二人で夢を見る。
2度目の朝が来た時、部屋を満たすのは安らかな権兵衛の呼吸とぱらぱらとした雨の音だった。
どうやら今日は天気雨のようで、窓から朝陽が差し込んでいる。
照らされた蒼くしなやかな髪の毛は光を纏っている。
暖かい紫陽花は頬を桃色にして小さく揺れた。
「…ふ、こぉしろう」
ハッキリと聞こえる寝言に、優しく頭を撫でてやった。
夢の中でも、権兵衛の隣は俺しか認めん
3本連続光権!!まじでハマってます…右左も勿論毎日読んでぐへぐへしてるんですけど書こうとすると今まで書きすぎたせいで手が止まってしまう😇😇
ここからは今回の小説について語らせてください!!
もう梅雨が過ぎて蒸し暑くなってしまいましたが…、梅雨のジメジメとしているのに花に滴る雨粒を見ると全てが透き通っているように感じるあの感覚を光権に落とし込みたくて頑張りました
小説中にある通り紫陽花は雨の時の方が鮮やかに見えるし、水分も沢山必要だけど植物だから勿論日光も必要なんです☀️
だから泣いてる時に光士郎さんに照らして欲しくて…。二人の慰め合い方って慰め合うってよりもただそばに居るって感じがします
あと原曲の歌詞をかなり自分なりに噛み砕いて書いたので私の世界観を自分でも見れて楽しかったです🎀
改めて!!原曲本当にとってもいい曲なので1回でもいいから聞いてみて欲しいです🥹
➡️「Just the Two of Us」⬅️
コメント
4件
曲聞いてきた!! なんだろう.....曲の世界観を表せる事がすごいなぁって思って!!! あと今日も今日とて光権が尊くてすこや....😇🫶
読了しました。雨音と紫陽花のモチーフがこれでもかと噛み合っていて、とても美しい回でしたね。「雨が降るから虹ができるのではなく、雨の後に晴れるから虹ができる」という台詞、本当に沁みました。光士郎が決して慰めの言葉を並べず、ただ“そこにいる”ことで権兵衛の雨をやり過ごす構図が、二人の関係性にすごく合っているなと。あと「あったかい…」からの大慌ての権兵衛、可愛すぎます…。こちらまでじんわり温かくなりました。素敵なエピソードをありがとうございます。
聖徳妹子
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