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#R15
(株)姫神V
521
#日記
QuartoMew
3,500
シュメール
364
25話 「月の下でもう一度───」
───結翔side
蓮「……そこにいるの、結翔くん?」
結翔「!」
聞き覚えのある声。
結翔は、ゆっくり振り返った。
結翔「その声……」
結翔「……もしかして、蓮?」
街灯の下。
そこに立っていたのは――
蓮「……やっぱり」
蓮「結翔くんだ」
結翔「…………蓮」
しばらく。
何も言えなかった。
会いたかったはずなのに。
学校に来なくなった理由を聞きたかったはずなのに。
いざ本人を目の前にすると――
言葉が出てこなかった。
蓮「……久しぶり」
結翔「………」
蓮「こんな所にいるなんて珍しーい」
結翔「…………」
結翔「………あぁ、まぁそれもそうだよな…」
蓮「…………」
結翔「こんな時間に出歩くとか」
蓮は何も言わない。
結翔「…………」
蓮「……別に否定はしてないんだけどさ」
蓮 「俺も人の事言えないし」
また沈黙。
でも。
嫌な沈黙じゃなかった。
ただ、お互いに何かを探しているような――
そんな時間だった。
蓮「…………結翔くん」
結翔「?」
蓮「……なんか」
蓮「らしくないね」
結翔「…………」
結翔は少しだけ笑う。
結翔「……らくない?俺が……?」
蓮「結翔くんはもっとハキハキしてるし、一目で分かるよ」
結翔「…………」
蓮「前の結翔くんなら」
蓮「もっとくだらないこと言ってる」
結翔「……例えば?」
蓮「それは分からないけどさ」
蓮「絶対なんか言ってる」
結翔「…………」
結翔「……お前って意外とよく見てんのな」
ほんの少しだけ。
結翔の口元が緩む。
蓮「…………」
蓮も、それを見て笑った。
その笑顔は――
どこか懐かしかった。
結翔「……なぁ」
蓮「ん?」
結翔「聞きたい事があるんだ」
結翔「お前がいる世界のこと」
結翔 「そして───」
結翔 「コロシ屋について」
蓮「…………」
一瞬。
蓮の笑顔が止まる。
結翔「……俺に教えてくれ、頼む」
蓮「結翔くん、馬鹿なの?」
蓮 「コロシ屋のこと教えてって……何?」
蓮「もしかして結翔くんもなるつもり?」
結翔「違ぇよ…!」
結翔「ただ…知りたいんだ……俺が知らない世界を……」
結翔「俺の知ってる世界はなんか……お前らの知ってる世界とは程遠いって…今改めて知った」
結翔「……だから、教えて欲しいんだ」
蓮は答えない。
結翔「…………蓮?」
蓮「……やめといた方がいい」
蓮「コロシ屋は壊れた人間しかいないんだよ?」
蓮「結翔くんの性格からして…合わない」
結翔「………!でも…!俺は……」
蓮 「結翔くんってさ」
蓮「知らないものほど、知りたくなるタイプでしょ?」
結翔「……でも知ったところで得することなんてないよ」
蓮「むしろ今まで普通だって思っていたものが全部馬鹿らしく思う」
結翔は黙った。
そして――
結翔「……」
蓮「…でも、知りたいって思うんなら、好きにやりなよ」
蓮の目が、僅かに揺れる。
結翔 「!」
蓮 「一度こっち側を知ったら、知らなかった頃には戻れないから」
蓮「それでも知りたい?」
結翔「知りたいに決まってんだろ…もうあんな思いをすんのは…嫌なんだ」
蓮「…………」
蓮「まぁいいや、俺は言ったからね」
蓮「勝手にしたらいいよ」
蓮「ただ結翔くんが思っているほどこの世界は甘くないから」
蓮「正義感とか、善意とか、そういう綺麗なものだけじゃどうにもならないことの方が多いから」
蓮「…………だからこそ俺は結翔くんには知らないままでいて欲しかったんだけどね……((ボソッ…」
結翔「?なんか言ったか……?」
蓮「いや?ただその方が、少なくとも今の結翔くんは」
蓮 「まだ自分のことを嫌いにならずに済むでしょって言っただけ」
結翔は拳を握る。
結翔「……蓮…ありがとな」
蓮「………お礼言われるような事してないけど」
結翔「いや、お前が近くにいてくれて良かったわ」
蓮「…!無自覚は怖い」
結翔「……お前さっきから何言ってんだよ笑」
蓮「……あ、いつも結翔くんだ」
結翔「俺はいつもこうなんだけど?」
結翔「なんかお前といたら、自然と笑えるんだよな…(あんな気持ちを忘れられそうだよ…おかげさまで)」
結翔「なんか能力使ったか?」
蓮「俺能力持ってない」
結翔「じゃなんだろうな?」
結翔「才能?」
蓮「……俺そこまで頭良くない」
そして――
しばらくすると隠れていたら月が見えてきたのだ───
蓮「…………」
蓮「あ、今日は三日月だね」
結翔「……三日月ってさなんか深い意味とかあんの?」
蓮「ん?あるんじゃない?」
蓮「… 三日月って、月が欠けてるように見えるでしょ」
蓮「でも月そのものが消えたわけじゃない」
蓮「見えてないだけで、ちゃんとそこには残ってる」
蓮は少しだけ笑う。
蓮「だから三日月は」
蓮「『失ったもの』とか『隠されたもの』を表すことがあるんだって」
蓮「俺は思ってる」
結翔「…………」
その言葉を聞いて。
結翔は蓮を見た。
結翔「…蓮らしい考えだな」
結翔「俺には思いつかないわ」
蓮「…………」
蓮の笑顔が止まる。
蓮「ただの綺麗事にそんな尊敬する?」
結翔「綺麗事って……お前な……」
結翔「……それはお前の純粋な考えだろーが」
結翔は蓮の頭を軽くチョップした
蓮「……あで…」
蓮はそういいながら頭を抑えた
蓮「……急に叩くなんて、ひどー」
結翔「お前が認めないのが悪いんだろ」
結翔「…………」
結翔「でも」
蓮「……俺の言い方も悪かったかもな…」
結翔「普通に、すごいって言うべきだった」
蓮「別に……ただの綺麗事並べただけだs───」
結翔「蓮???(^^(圧))」
蓮「……うっごめんって」
蓮「もう言わないから」
結翔「…………ならよしとしよう」
この会話の時間はあの頃に戻ったみたいだった。
結翔「……蓮今改めて言うわ。少しの時間だけだったけど」
蓮「…………?」
結翔「お前と話したらモヤモヤが消えてさ……その代わりになんかあの頃に戻れたみたいな気持ちが出てきて」
蓮「…………」
結翔「すげー嬉しい気持ちになれた」
結翔「お前と話すのは楽しい」
結翔「初めて出会ったあの日はまだ怖さも感じれたんだけどな……今はもう怖いとなんか微塵も思わねぇ」
蓮「…………」
結翔「この世界の事を知って、蓮と並べるよう努力する。なんかあったら俺も頼るかもしれねぇ」
結翔 「でも、対等な関係じゃなければ…そんな事もできない。蓮にとってはまだ俺は未熟者だ」
結翔「……それは分かってる。当たり前にいると感じて思い慣れていた人が急にこの世を去って……あの日の絶望感は……もう忘れたくても忘れられない……」
蓮「…………」
蓮は俯いた。
その肩が、ほんの少しだけ揺れる。
そして――
蓮「…………」
蓮「……結翔くん……理想見すぎだよ」
結翔「は!?お前そこは突っ込むとこじゃないだろ!」
蓮「そういうこと言われたら」
蓮「……俺も反応困るんだけど」
結翔「…………」
蓮「…………」
蓮は顔を上げる。
そして。
今度はちゃんと笑った。
蓮「……結翔くん」
蓮 「久しぶりに会えて良かった」
結翔「…………」
結翔「俺も」
たった二言。
それだけだった。
でも――
二人にとっては。
それだけで十分だった。
蓮「……時間の流れはやっぱ早いね〜……」
結翔「うわっやべ…!もう2時間経ってんだけど」
蓮「今日はもう帰りなよ」
結翔「……お前は?」
蓮「俺はまだ仕事あるから」
結翔「…………」
蓮「大丈夫だよ。明日は休みらしいし」
結翔「…………本当にか?仕事ってコロシ屋のか……?」
蓮「うん」
蓮「それ以外に理由なんてないよ」
結翔「まぁお前が無事ならいいんだ……けど…」
蓮「もしかして、気になる?」
久しぶりに。
蓮が自然に笑った。
結翔も――
ほんの少しだけ笑った。
そして二人は、別々の道へ歩き出す。
結翔「………そりゃ気になんだろう」
蓮「明日、俺仕事休みだしちょっとだけなら教えてあげれるかも」
結翔「……!それ本当か!?」
蓮「………多分だよ?多分…」
蓮は少しだけ驚いた顔をした。
そして――
蓮「じゃもう俺行かなきゃ」
蓮「またねー結翔くん」
二人はそれぞれの道を歩いていく。
けれど。
今夜だけは。
結翔の心にあった「ひとり」という感覚が――
ほんの少しだけ、消えていた。
そして蓮もまた。
久しぶりに誰かと笑ったことで。
ほんの少しだけ――
自分がまだ「自分」でいられる気がした。
─────
月だけが。
そんな二人を静かに見下ろしていた。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。 「月の下でもう一度───」、読ませていただきました。 三日月の話、すごく好きです。欠けて見えても月そのものは消えてないって、蓮くんの優しさと諦観の両方が詰まってて切なかった。結翔くんが「お前といたら自然と笑える」って言うところ、心がぎゅっとなりました。 重い世界だからこそ、こういう静かな夜の再会の温かさが沁みます。蓮くんの“まだ自分でいられる”という気持ち、それをそっと見守る月…すごく美しいシーンでした🌙 また次の話、楽しみにしています。