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孤独な翼

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孤独な翼

26 - 再起の瞬間

♥

26

2026年01月25日

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セリスの手紙が、静かに指先から滑り落ちた。

白い床に触れても、音はしない。

礼拝堂は、相変わらず沈黙に満ちていた。

祈りの場に相応しい静けさ。

だが少年の内側では、剣戟よりも激しい音が鳴り続けている。

「…セリスは…」

名を呼ぼうとして、声が震え、途切れた。

喉の奥で、言葉が崩れる。

ガブリエラが、低く、穏やかに告げる。

「彼は最期まで、お前の行く先を案じていた。」

その一言が、胸を強く打った。

少年は唇を噛みしめる。

血の味がした。

押し殺してきた思考が、堰を切ったように溢れ出す。

叩き込まれた言葉。

ーー考えるな。

ーー疑うな。

ミカリスの、感情のない冷たい瞳。

そして、 セリスの遺した、たったひとつの願い。

ーー選べ。

「…処刑まで…あと、何日ですか。」

自分でも驚くほど、静かな声だった。

ガブリエラは、一瞬だけ沈黙し、短く答えた。

「明日だ。」

その言葉と同時に、世界が止まった。

逃げ場はない。

先延ばしも、迷い続ける時間も。

剣を振り続けてきた理由が、 今、はっきりと“選択”として、少年の前に立ちはだかる。

セリスの声が、胸の奥で、確かに生きていた。

少年は、ゆっくりと顔を上げる。

涙の跡はまだ乾いていない。

それでも、その金色の瞳に、再び光が灯った。

怒りでも、復讐でもない。

揺れながらも、自分で決めるという、強い意志の光。

ガブリエラは、その瞳を静かに見つめる。

「…ようやく、前を見たな。」

少年は小さく息を吐いた。

「逃げません。」

その言葉に、もう震えはなかった。

処刑は、明日。

天使として生まれた少年と、 悪魔として囚われたサリエルの運命が、 完全に交差するまでの、最後の猶予。

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