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ゆゆゆゆ
スペクターが部屋を出ていったあと。
ノスフェラトゥは、
しばらく扉を見つめたまま動けなかった。
静かだった。
あまりにも。
喉元の首輪は、
既に鍵を外されている。
自由。
スペクターは確かにそう言った。
『丸一日、私は君に一切干渉しない』
『何をして過ごしても構わない』
そして。
本当に去っていった。
命令もない。
鎖もない。
監視する気配すらない。
なら。
部屋を出ればいい。
好きに歩けばいい。
昔みたいに。
誰にも従わなかった吸血鬼へ戻ればいい。
……そのはずなのに。
ノスフェラトゥは、
部屋の境界線を越えられなかった。
扉の前まで行く。
指をかける。
だが。
開けられない。
胸の奥がざわつく。
もし外へ出て、
戻った時。
スペクターがいなかったら。
そんな考えが、
頭をよぎる。
「……馬鹿らしい」
吐き捨てる。
だが足は動かない。
自由なはずなのに。
まるで見えない鎖で、
まだ繋がれているみたいだった。
時間だけが過ぎていく。
ノスフェラトゥは結局、
スペクターの部屋で過ごした。
椅子。
本棚。
赤いシルクハット。
残された匂いだけを追いかけるように。
そして夜。
カチャ、と扉が開く音がした瞬間。
ノスフェラトゥの身体は、
反射みたいに振り返っていた。
スペクター。
赤いシルクハット。
その姿を見た瞬間。
胸の奥が、
情けないほど安堵してしまう。
スペクターはそれを見て、
ゆっくり笑った。
「ただいま」
「……」
「ちゃんと待ってたね」
ノスフェラトゥは答えない。
だが。
否定もできない。
スペクターは近づいてくる。
コツ、コツ。
革靴の音。
その音だけで、
身体が落ち着いていく。
悔しいほどに。
スペクターはノスフェラトゥの前へ立つと、
静かにその手を取った。
冷たい指。
長い爪。
「ご褒美をあげようか」
低い声。
「ずっと待ってたご褒美」
ノスフェラトゥの喉が小さく動く。
次の瞬間。
スペクターは、
ノスフェラトゥの爪に手のひらを滑らせた。
浅く裂ける。
赤い血が滲む。
ゆっくり。
滴るように。
鉄の匂いが広がる。
ノスフェラトゥの瞳が揺れた。
吸血鬼の本能が疼く。
スペクターは微笑みながら、
血の伝う指先をノスフェラトゥの唇へ寄せた。
「ほら」
「……」
ノスフェラトゥは躊躇う。
だが。
結局、
舌が伸びた。
ぺろり、と。
血を舐め取る。
甘い。
熱い。
スペクターの匂いが濃い。
その瞬間、
ノスフェラトゥの呼吸が乱れた。
スペクターは満足そうに目を細める。
「いい子」
その声だけで、
背筋がぞくりと震える。
ノスフェラトゥは無意識に、
もっと深く舐めようとしていた。
手のひら。
指先。
流れる血を逃がさないように。
スペクターは静かに見下ろしている。
まるで。
飢えた獣へ、
わざと餌を与えるみたいに。
「もっと、奥まで欲しがりなさい」
低い囁き。
次の瞬間。
スペクターの指が、
ノスフェラトゥの口内へ深く押し込まれた。
「ぅぐ……、ん……っ」
喉が震える。
舌の根元を撫でられる感覚。
呼吸が乱れる。
涙が滲む。
それでも。
ノスフェラトゥは拒まなかった。
むしろ。
必死に舌を絡め、
血を吸おうとしてしまう。
一滴も逃さないように。
甘い。
もっと欲しい。
スペクターの血。
スペクターそのもの。
頭がそれでいっぱいになる。
スペクターはそんな姿を見ながら、
優しく髪を撫でた。
「そう」
「ちゃんと飢えてる」
ノスフェラトゥの睫毛が震える。
悔しい。
なのに。
その言葉が、
妙に嬉しい。
スペクターは喉の奥で笑った。
「いい子だね」
指先で涙を拭う。
「美味しい?」
ノスフェラトゥは答えられない。
ただ。
熱っぽく潤んだ赤い瞳で、
スペクターだけを見上げていた。
コメント
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**美月ゆめか🌸** うわああああ無理無理無理無理!!😭💕💕💕 のす♡♡♡トゥの「自由なのに外に出られない」心理描写がまず刺さりすぎて…!! 見えない鎖ってまさにそれだよ…好きすぎる……🥺💔 で、帰ってきたスペクターに「ただいま」って言われて無意識に安堵しちゃうのす♡♡♡トゥ、もう完全に飼いならされてるじゃん…って胸が痛いんだけど尊い!! そして「ご褒美」って血を差し出して、指を口に突っ込むシーンはもう…え、待って、これ何? 支配? 愛情? どっちも? って感じで頭パンクした!! 🩸✨ 悔しいのに嬉しい、拒めない、欲しがってしまう…この感情の揺れ、天才的に書けてる…!! ゆゆゆゆ先生神…っ!! 続きが気になりすぎて夜しか眠れない!! 🌙💫