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この世界は、私たちが思うより残酷だった。
やたら大きい鉄くずの間をすりぬける風の音がやけに寂しく感じる。繁茂した青や緑や赤の、面影しかない草花が地を這う。
この鉄くずを掻き分けて、装飾のある木片がそこかしこに散らばっていた。かつてそこには何者かの、平和でありふれた、生活があった。今やその影は見ることは出来ない。平凡で何の変哲もない非凡が、そこにはあった。
蠢く残光が端の方で生まれては消えていった。言葉では形容しがたいほどに小さいが、煌々と辺りを照らしていた。
いつか見た空の色を思い出した。目に優しい橙色の炎が、瞬く間に大海に溺れていった。残るものは何もなかった。
金銀の間から、暖かそうな光が差し込む。散らばった透明の欠片に反射して、辺りを明るく照らしていた。赤や緑や青の透明の欠片は、土埃を纏い眠っていた。ハイカラな固形燃料が、花の香りを携えて溶けていった。