TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「他のブランドも見に行ってきた。でも本当にヤングカジュアル、という感じだったな。ファストファッションもあったし。その中でミルヴェイユっていうのもなかなか面白い試みではあるな」

すでにいろんなところを見てきたらしい槙野が美冬にそう報告する。美冬も頷いた。


「ええ。最初はコラボ商品からセレクトして出すのよ。その方が違和感がないから。それからミルヴェイユの商品を出すの。緊張するわ」


槙野は美冬の頭を撫でた。

「大丈夫。お前にはたくさんの味方がいるだろう。心配することはない。きっと成功するから」


美冬は周りを見回す。

服の最終チェックをしている石丸。一緒にチェックしているのは綾奈だ。

舞台やその他の確認は杉村がしてくれている。他にもミルヴェイユのデザイン部や広報、企画開発部の社員も走り回っていた。


そして美冬の側には槙野がいる。

ん? と槙野は美冬に向かって首を傾げていた。


「ねえ、何か困ることってないの?」

「なんのことだ?」

「だって、私ばっかり助けてもらってない?」

「……っふ、ははっ」

「何笑ってるのよ」


「ばーか、お前が甘えてくれるのこそ幸せなんだろうが。美冬は心を許した相手にしか甘えない。俺に甘えるってのはそういうことだろう。最初は甘えるどころかイキリ倒してただろう?」


「イキ……」

そうだったかもしれない。そんな風に言われたこともあった。

「いいんだよ。それで」

そう言って槙野は美冬の指に自分の指を絡めた。


周りのみんなももちろんその光景は見えているけれど、まあ、仲良しだからなあの二人は、と思われている。

いつの間にかそんな風に認知されているのだ。


槙野は人前でキスしないだけ感謝してほしいくらいにしか思っていなかったのではあるが。



翌日のファッションショーは大盛況だった。

たくさんの人が見にきてくれて、ランウェイをモデルが歩くと可愛い! と黄色い声が上がる。


熱気を直に感じて、バックヤードで美冬は感動していた。

店で販売しているだけでは決して感じることができなかったものだ。


「美冬!」

最後にデザイナーがランウェイをモデルと歩く、と美冬は聞いていた。

石丸がモデルと歩くのはそれは華やかだろうと楽しみにしていたのだ。


そんな石丸が、美冬を呼んだ。

手に持っているのはウェディングドレスだ。


「え!? それって!?」

「この日のために完成を急いだんだよ! 早く着替えて! 僕も出なくちゃいけないから!」


「え? えーっ!?」

早く! 早く! とみんなに急かされる。


皆知っていたのだ。

美冬のためのサプライズ。


あれよあれよと服を剥かれて、さっさとメイクをされ、着替えさせられる。

石丸がデザインした美冬のためのウェディングドレスは華やかなレースで彩られた品のあるミルヴェイユらしいデザインだった。


「すごい……可愛い」

ウェディングドレスなんて結婚式当日しか着ないと思っていた。


けれど、こんな機会に着ることができるのは本当に嬉しいし、石丸のデザインをみんなに見てもらえるのも嬉しいと思ったその時だ。


「お、さすが、すげーいいじゃん」

黒のタキシードを着ている槙野が美冬を誉める。


きっちりとまとめた髪。さっきまでそんな風にセットしていなかったくせに。

身長も高い槙野はタキシード姿も映える。


「嘘でしょ……」

へたり込みそうになる美冬だ。

「おい、へばってる場合じゃないぞ。ほら! 行くぞ。アイツのデザイン、みんなに見せるんだろうが。いい宣伝だ。でなきゃ俺まで出るか」

さっさと美冬の手を槙野が掴む。


「聞いてないよっ! 祐輔知ってたの?」

「知っていなければサイズぴったりのタキシードなんて出てこない。このタキシードも正確にはミルヴェイユ製だ。美冬の会社のデザイン部のメンバーが作ったからな」


「なんで教えてくれないの!?」

「教えたらサプライズにならないだろう」

槙野も会社のメンバーもみんなとても楽しそうだ。


「社長! 頑張って!」

「可愛い! 似合ってます。お似合いです、お二人とも」


舞台袖に行くと急に緊張で表情も固くなる美冬だ。

それを見た槙野は「行くぞ」と声をかけ、ランウェイの正面に美冬を引っ張っていくと、そのど真ん中でぎゅっと美冬を抱きしめて、舌も絡ませるほどのキスをしたのだ。


会場からきゃーっと声が上がる。

真っ赤になった美冬は槙野の胸を叩いた。


イタズラっぽく笑うのはもう腹が立つくらいに男前で、キュートで……カッコ良すぎなんだけど!


「緊張、ほぐれたか?」

「バカ! もっと緊張したわよ!」


髪をくしゃっと解いた槙野はタキシードのボタンを開ける。

一気にラフな雰囲気になった。

それを見た美冬はもう! この人は! とヒールを脱いで裸足になった。

ドレスの裾を抱える。

そうして槙野に思い切りの笑顔を見せたのだ。

「緊張、ほぐれたわ! もう楽しむ!」


そんな二人が手を繋いで元気にランウェイを歩くと、会場が一気に盛り上がりを見せた。

演出だと思われている。


そうして最後に石丸が他のモデルを引き連れて登場したのだ。

わああっとさらに会場中から声が上がる。

美冬と槙野もその場に残らされた。


「もう! 覚えてなさいよ! 二人とも!」


槙野と石丸は笑ってハイタッチしている。

信じられない、夢のような時間だった。

loading

この作品はいかがでしたか?

13

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚