ただただ広い
真っ白な空間に
ぽつんと、一つだけ机が置かれている
そのそばにはノートパソコンをいじりながら、ぼおっと頬杖をついている女
癖のある緑髪と、緑淵の四角い眼鏡をかけている
「…難しいねぇ…」
しみじみと呟くように言う女が此方を一瞥すると
ふっと笑い此方に手招きした
「まぁ座りなよ」
そう言って、どこからともなく椅子を僕に差し出す
言われるがまま座ると、女は口を開いた
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まずは自分語りからでいい?そうでもしないと俺話せなさそうでさ、
…ありがと
ひとまず、俺には夢がある
憧れに近づきたいゆえにできた、ささやかで、あまりにもでかすぎる夢
なりたい、近づきたい、あの人の存在に救われたように、自分も誰かの救いになりたい
誰もが好きなことをもっと大きく言える世界にしたい
その夢について考えるたびにどんどん膨らんでいってさ
でもそれを抑えるのはいつだって親だった
居なくなっちゃえばいいのにって、実際何回か思った
でも、みんなを見てるとそれは贅沢な悩みで
俺の夢とか目標とか将来とか
情けなくてちっぽけで
俺が病んでも世界は動くし
俺が言わなきゃだれも気づいてくれやしない
それは誰でも一緒だって、理解はしてるのに
なんで俺だけって悲観するときもいっぱいある
好きも、共感も、夢も…嫌いも
ま、陳腐なこと言うと些細すぎるんだよ
どうせ奪われる
どうせわかってもらえない
どうせ叶わない
だったらせいぜい追えばいい
そっちのほうが楽しいんじゃない?
好きとか突き詰めて
それで生きれたら最高だって思えばいいじゃん
……哲学の中に「死への存在」っていうのがある
誰しも死を強く意識すれば、本当にコレでいいのか
もしかしたら明日死ぬかもしれないのに流される人生でいいのかって思い始めて
ついには本当の自分になることができるっていう思想
俺はコレが大好き
思ってることを全部言語化されたような気がした
コレでいいんだで自分を閉じ込めないでほしい
本当の自分を出したい人って現実逃避癖があるって俺は思う
その人は”本当の自分”を知ってる
夢がわかってる
でもできない、自信もないし勇気もないから
本当の自分を出したい人の中で臆病で慎重な、よくいる人
でもそこで行動できるのが
大好きな活動者さんとか
そういう人たちだと俺は思う
”本当の自分”
外に出してほしいな
ん〜脱線しすぎ?
じゃあここからは、誰しも当てはまる話じゃなくて、君にフォーカスを当てよう
君はどんな人?
家に誰も居なくて
家族と会いたくて
大丈夫だと自分を誤魔化して
誰にも言うことができなくて…
え?ひどい?ごめんごめん。ちゃんと言わないと俺、忘れっぽいからさ
まぁひとまずは、災難だったね
同情はいらないって?
これは同情でも、哀れみでも、慰めでもなんでもない
ただの定型文
……「無理しないでね。」か…
それすら無理だよな
大切な肉親が離れて、無理しない方が無理だっていうのに
……ま、呪詛はやめようか
正直、君すごいと思うけどな〜
現実逃避って、防衛手段なんだよ
自分の身を守れる
そこがまず偉いと思うな〜
あと助けを求められるってとこも
誰にも知られず朽ちていかずに
少しでも今を改善しようと頑張ってるじゃん
生きてて無駄な瞬間なんてない
ウジウジしてるのもまた一興
辛けりゃ俺らに頼ればいいし
君はすごいよ
だからさ、
少しでも手伝わさせてよ
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話がそこまで終わると、白い部屋がパラパラと崩れだした
「…嗚呼、時間だ」
そう言って、パソコンを閉じ
立ち上がった
ゆっくりと僕の後ろを差す
振り返ると、真っ青な空がまるで切り取られたかのようにぽつんとあった
「あれが出口だよ。気をつけて帰ってね。もう時期ここは消える」
じゃあ一緒にと手を伸ばし叫ぶが彼女は手を取らない
どんどんと出口に吸い込まれていく
「良い空だろ?こんな空の日には歌でも歌いたくならない?」
だめだ、ここから出たら、もう二度と彼女とあえない気がする
必死に出まいと堪えるが体はお構い無しに動いていく
ばっと、白い雲がたなびく空に投げ出された
時が止まったような感覚さえする
「ごめんね、こうやらないと伝えられなくて」
ガラガラと崩れ去る白い天井
瓦礫に埋められ出口の先はもう見えない
ただ、彼女を思わせる緑がそこに残っただけ
重力に逆らえぬまま
僕は落ちていった
瓦礫の山の向こう側
「私は生きている_____」
君も生きている
コメント
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最 高 す ぎ て 飛 ん だ わ 。 や っ ぱ 、ひ び 弔 が 書 く 小 説 大 好 き 😭😭😭 題 名 と 小 説 が 合 い す ぎ て い る 👊💥