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コメント
2件
好きとしか出てこない位ぐらいめっちゃ好き
「……入るぞ」
返事を待たずに、エリオットが踏み込む。
セブンの肩がわずかに動く。
止めるべきか、一瞬迷って——
遅い。
エリオットはそのままリビングへ入る。
視線はすぐに、PCへ。
「……これか」
低く呟く。
セブンが一歩前に出る。
遮るように。
「見るな」
「もう見てる」
即答。
エリオットはセブンの後ろに立つ。
画面を覗き込む。
文字が流れている。
一定じゃない。
踊るみたいに、不規則に。
ログでもない。
チャットでもない。
“見せつけてる”。
『君が“お兄ちゃん”か』
一行、浮かぶ。
エリオットの目が細くなる。
『僕の昔の相棒とは、いい関係みたいだね』
セブンの指が、わずかに強くなる。
キーボードに触れかけて——止まる。
エリオットが鼻で笑う。
「覗き見か?趣味悪いな」
一拍。
文字が、にじむように変わる。
『君は僕の“ショー”には邪魔になる』
静か。
でも、はっきりとした敵意。
エリオットは肩をすくめる。
「随分な言い方だな」
「主役気取りか?」
画面が、わずかに歪む。
ノイズが、走る。
『主役は、僕じゃない』
一瞬の静寂。
『彼だよ』
“彼”。
クールキッド。
その名前を出さないまま、
確実に指してくる。
『選ぶのも——彼だよ』
セブンの拳が、強く握られる。
エリオットも、何も言わない。
ただ、理解する。
——これは、もう。
ただの“干渉”じゃない。
奪いに来てる。
『楽しみにしてるよ』
『どっちに転ぶか』
画面の文字が一瞬だけ乱れる。
けれど——
それ以上は続かない。
ぴたり、と止まる。
そして。
すっと消える。
通信、断絶。
部屋に、静寂が落ちる。
機械音だけが、やけに響く。
エリオットが、ゆっくり口を開く。
「……おい」
セブンは動かない。
画面を見たまま。
「なんなんだ、あいつ」
沈黙。
数秒。
長く感じる間。
セブンの視線が、わずかに落ちる。
そして。
「……あいつは」
言葉が、少しだけ重い。
「俺の、“過去”だ」
エリオットは何も言わない。
ただ、その横顔を見ている。
普段より、ずっと遠い顔。
触れれば壊れそうな距離。
「……」
エリオットが、ゆっくり息を吐く。
「厄介そうだな」
短く。
でも、軽くはない。
セブンは答えない。
代わりに、
PCの黒くなった画面に、
自分の顔が映る。
——その奥に、
まだ何かが“いる”気がして。
目を逸らせなかった。
あめ猫
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