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「いやぁ、にしても!魁ちゃんは自分が愛されていることを全く自覚してない」
「え?」
急に何を言い出したかと思えば、頭を打ったのだろうか。
「ま、確かにな。もうちょっと自分が愛されてるっつー自覚は持って欲しいな」
「ちょ、柊磨まで!?っていうか、私愛されてる自覚なんて」
「なんて、なに?普通に持ってるとかそーゆー事言うんでしょ」
図星すぎて口角が引きつる。悠磨も柊磨も勘が鋭い。
「自分は愛されて良い人間だし、もう沢山愛されてるんだよ」
そんな事、分かってる。お兄ちゃんも悠磨たちも充分すぎるほど私のことを愛してくれている。ただ、それを受け入れるのがどうにもできない。
「…ま、別にまだわかんなくてもいいかもな」
「柊磨…」
「お前に彼氏ができたり、親友とかできればわかるようになんだろ」
「彼氏って…考えたこともない」
柊磨が急に変なことを言うから顔が熱くなる。今絶対顔が赤い。何となく仰いでみる。
「魁ちゃん、彼氏ができたらちゃんと報告してね。変な輩だったら祓うから」
「遠回しに私が呪われたやつ好きになると思ってる?」
「違うよ。ただ魁ちゃんって鈍感だから」
失礼な、と言おうとしたのをやめた。たしかに人に関わる機会が少なかった分、自分は恋愛とか感情に鈍感かもしれないから。
「人に関わって、愛情とか感じて、いつか与える側になれるよう努力するよ」
とりあえず、それだけ言っておいた。それが今の私の精一杯だから。
2人はそんな私を見たあと、顔を合わせて、それから優しく微笑んでくれた。その小さな宣言を包み込むように。