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第64話
起きてから一年と八ヶ月。
ソフィーが帰ってきたとの報告があった。
「お兄ちゃん。黙っててごめんね。一月前に生まれたんだ。可愛い男の子だよ!」
「ちょっと待って。甥っ子って……結婚は? いつ、どこで?」
うん。追いつかないし、急に甥っ子が生まれたって……しかも、一月も前。結婚の報告もされてないし、妊娠も。
それに、僕の家系の男の子って……
僕が珍しく取り乱していると、男の子を抱えた男性が歩いてきた。
僕より明るい金髪に青々と生い茂る葉のような深緑の瞳。
抱かれている男の子は、金髪だけど、明るくて落ち着いている髪の色。寝ているから瞳は分からないけど、可愛かった。
……今日の内に言うか。ラルフの事。
「初めまして。ソフィーの夫のティモです。この子はアドルフです」
「初めまして。ロルフです」
一緒に……いや、とりあえずだ。
「おめでとうございます。ソフィー。今まで話してなかったんだけど、僕の兄の事について話したいから、部屋に来てもらっていい?」
「お兄ちゃんに上がいるの……? 聞いた事無いけど……」
「詳しくは、また後で」
「えぇ……むぅ……」
そう言ってソフィーは頬を膨らませた。
ふっ。なんだその顔。
「え! ソフィー!」
そう言ってアニカもきた。
「アニカ! 最近、顔出せなくてごめんね。でも、お陰で産めた」
「良かったー……ソフィーもその子も無事で」
確かに、出産には、リスクがあるって何かの本に書いてあった気がする。
『勇者様。光の子だよ』『凄い。可愛い』『光、強いね』
妖精たちも、わちゃわちゃとしている。
「精霊たちも楽しそうだね」
「精霊なの? ずっと、妖精って呼んでたけど……」
「呼び方なんて気にしてなかった」
僕たちがよく分からない事を論争していると「何の話?」とティモさんが首を傾げている。
「光の力のある人は妖精だか、精霊だか、色々と見えるんだよ」
「光の力って……ロルフさんも、侍女さんもか?」
「侍女じゃなくて、アニカ姫。昔からの仲だよ」
「ひ、姫様! 第一部隊の人と姫様……ソフィーの情報網はどうなってるんだ?」
「ティモとお兄ちゃんよりかは、広いよ」
「酷いな」「本当か?」
僕とティモさんがハモった。
「事実でしよ。ふふっ。ゴメンって。それ程変わらないよ」
う〜ん……それ程って、どのくらい何だろ?
「ま、夕方頃に僕の部屋に来て。ソフィーに見せた事無い資料もあるから」
「分かった」
それから、アドルフくんを抱かせてもらったり、お話をしたり疲れた。
ソフィーたちに、色々と追い抜かされちゃった……結婚も、子供も、背はこれから抜かすとしても抜かされちゃったな。
その日の夕方。
「入るよ」
そう言ってソフィーは僕の部屋の扉を通った。
「これ、読んでみて」
僕はお母さんの部屋にあった本を渡した。
それには、お母さんの家系が『光の家』という事と、光の家は妖精に愛されているって事や、男の子は生まれつき弱く生まれる事が多いって事とか色々。
「アドルフくんは、強い子だったよね」
僕が『大丈夫』と励ますとソフィーも頷いた。
「うん……お兄ちゃんも?」
「僕も強い方だと思うよ」
僕は深呼吸をしてから「ラルフっていう僕の三つ上の長男がいるんだけど、ソフィーが生まれる前に逝っちゃったんだよね……」
「そうなんだ……」
「ごめんね。お祝いしなくちゃいけないのに、こんな話して」
「うぅん。話してくれて良かった」
「やっと話せた。ソフィーも休んでいいよ。これだけだから」
「うん。ありがとう」
そう言ってソフィーは机の上に本を置いてから僕の部屋から出た。
僕はその本を見た。
『光の家の血筋がある者は、長く生きられ、命が尽きるとその地で永遠とわの時を過ごす。ただし、あの世へは行きたくても行けない』
……これ、魂になってもホルムの地に漂っとけって事だよね……
お母さんも、お父さんも、お兄ちゃんも、どこで何をしてるんだろう……
『ロルフ。覗いてすまないが……長くってどのくらいだ?』
僕がハッとして後ろを向くとマルコさんがまじまじと本を覗いていた。
「マルコさん! 驚かさないで下さい……まぁ、それは分かりません。僕の家族は、寿命まで生きた試しがありませんから」
『う〜ん……倍だと、百歳か。ユラガ族と同じだと考えると四五百歳。それより長い事はあるか?』
「いやいや、長いって……分からないか……ってか、その前に死ぬ可能性の方が高いです」
『以外にそうじゃないかもそれないぞ。王族は普通だよな。光の家だけか?』
「知らないよ。知ったのは……まぁ、割と最近だし」
『知ったのは、十二歳の頃だろ。今はもう……三十歳だろ』
「肉体年齢は、十四歳です」
『ま、こんな所で論争してないで、飯食べてこい』
そう言われて背中をポンと叩かれた。
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コメント
1件
おお、ソフィーが帰ってきてしかも甥っ子まで!? しかも結婚も妊娠も知らされてなかったって急展開すぎるだろ(笑)でも無事に産まれてよかったな〜。アドルフくん強い子みたいで安心したわ。 ラルフ兄さんの話、ようやく打ち明けられたんだな。光の家の秘密も気になるし、長く生きられてあの世に行けないって設定が切ない…。マルコさんのツッコミも相変わらずナイスだわ。次も楽しみにしてる🔥