テラーノベル
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翌朝、格子窓から差し込む朝日は、煌の重い意識を容赦なく叩き起こした。
寝返りを打つたび、シーツが擦れる音さえ昨夜の記憶を呼び覚ます。耳の奥で、あの低い声がしつこく再生された。
『……だからこそ、わしはお主のことを好いておるのだがな』
(……ッ、クソが。なんであんな奴の言葉が、離れねぇんだよ……!)
いくら壁に向かって唸ろうとも、脳裏に焼き付いた黄金の瞳は消えてくれない。
朱雀の囁きは甘い毒となって耳朶にまとわりつき、浅い眠りの中でも煌の心を蝕み続けていた。
胸の奥でじりじりと燻る熱は、どれだけ自分に毒づいても鎮まる気配を見せず、むしろ昨夜の沈香の香りをより鮮明に引き寄せるばかりだ。
いくら壁に向かって唸ろうとも、脳裏に焼き付いた黄金の瞳は消えてくれない。
朱雀の囁きは甘い毒となって耳朶にまとわりつき、浅い眠りの中でも煌の心を蝕み続けていた。
胸の奥でじりじりと燻る熱は、どれだけ自分に毒づいても鎮まる気配を見せず、むしろ昨夜の沈香の香りをより鮮明に引き寄せるばかりだ。
落ち着かない。 悔しい。 なのに……
「~~っ! あーもう! 考えるな考えるな考えるな!」
寝台から跳ね起き、部屋の中心で地団太を踏む。それでもやはり昨夜のことが頭から離れない。 こうして一人でいると、朱雀に絡め取られた時間の余韻が嫌でも意識されてしまう。
そんな折、控えめなノックの音とともに扉が開き、燕花が滑るように室内へ入ってきた。
「童殿。お休み中に失礼致します。ご報告が」
昨夜のことを思い出したかのようにほんのり頬を染めつつも、仕事モードに切り替わった表情は凛として美しい。それを見て内心ほっと胸を撫で下ろしながら、煌は乱れた髪を整えもせず答えた。
「おぅ。昨夜の侵入者の件か?」
「はい。ですがそれよりも先に、『氷嵐』に関するご報告がございます」
燕花は小卓に近付き、巻物を開きながら淡々と説明を始める。
「氷嵐。北峡幽谷出身の商人であることは確認が取れました。出入りしている店は『鳳来堂』のみ。仙煙草の原料となる特殊な草の取引を請け負っているようです」
流石は燕花だ。どうやって情報を収集したのかはわからないが、一晩でここまで詳細を掴んでいるあたり、プロフェッショナルの貫禄を感じさせる。
けれど――。
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