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三章「死闘、村正と骸の王」
東京都新宿、午前3時。
新宿の空は、霊気に染まり、星すら見えなかった。 斬の呼吸は荒く、村正の呪いが体を蝕むたびに、視界が赤く染まる。
「血、肉、骨、俺によこせやー!」
斬の叫びが街に響く。 その声は、もはや人のものではなかった。
妖刀・村正に呪われた斬の殺意が、彼の理性を焼いていた。
がしゃどくろが一瞬、動きを止める。
「……妖刀村正。まさか、使い手がここまで堕ちるとは」
斬は刃をがしゃどくろに向ける。
「秩序を壊したものよ、ここで消す」
がしゃどくろの巨大な手が振り下ろされる。 だが、斬の姿は消えていた。
「地獄斬!」
地面から飛び出した斬が、がしゃどくろの腹を斬り裂く。
骨が砕け、バランスを崩す──が、すぐに再生する。
「再生するのか。なら骨、取り放題だな」
がしゃどくろは冷静に言い返す。
「これが妖刀村正の力か。だが、所詮はこの程度」
斬はがしゃどくろの体を駆け上がり、首元まで到達する。
「オラァ!」
一閃。だが、がしゃどくろは再び再生する。
「私の魂を斬らない限り、私は倒れん」
斬は笑う。
「なら、痛めつけてから斬るだけだ」
がしゃどくろは構えをとり、斬に迫る。
「これは流石に斬れないな」
斬は必死に避ける。
都市は混乱し、ニュース中継中に命を落とす者もいた。
「血……叫び声……もっと見たい!聞きたい!」
斬の殺意が高まり、スピードが上がる。
「落空斬!」
落下の勢いを乗せた一撃。
だが、がしゃどくろの頭は斬れなかった。
「硬い……他のところは簡単に斬れたのに。まさか……」
がしゃどくろは聞く。
「なぜ急に速くなった?」
斬は答える。
「この体の持ち主の斬は“暗殺の殺し屋”なんだよ。そして俺と斬の力の源、それは“殺意”だ。村正が殺意を上げることで強くなる。
人は気持ちが体に影響することがあるんだぜ」
「なるほど。ですがこの一撃であなたは終わりです」
がしゃどくろは構えをとる。
「手骨拳!」
斬は吹き飛ばされ、姿を消す。
「この拳は、くらった人間は確実に即死します。百鬼夜行の秩序を壊したものは皆、こうなる運命なのです」
がしゃどくろが去ろうとしたその時──
「パン!」
銃声が響く。
一キロ先のマンション屋上に、弾が立っていた。
「斬が吹っ飛んでたのが見えた。仇撃ちに来た」
がしゃどくろは笑う。
「仇?そんなことを殺し屋がするかよ。確かお前も共犯だな。秩序を壊した者を消す」
がしゃどくろが再び拳をあげる──その瞬間。
「落空熱波斬!」
斬が上空から腕を斬り落とす。
「お前のおかげで正気に戻った」
がしゃどくろは驚く。
「斬、なぜ生きている?」
弾は答える。
「俺のライバルの斬が簡単に死ぬと思うなよ。斬は普通の防弾チョッキの100倍の強度の服を着ている。そのおかげでギリ致命傷を逃れたようだな」
「なぜそんな物を?」
「弾は怒るとすぐ銃を発砲するからね。対策に着てる」
がしゃどくろは東京タワーを手に取る。
「ここは東京。なら東京タワーで消してやる」
「弾、がしゃどくろの頭を撃ち抜け!俺では斬れなかった。お前が頼りだ!」
「斬でも斬れないってマジかよ。なら俺の全力を持ってがしゃどくろ、お前を始末する」
弾はレールガンを構える。
「これが俺の最終兵器だ!がしゃどくろ、お前の頭を吹き飛ばす!」
バーン!
がしゃどくろの顔が吹き飛び、魂が現れる。
「霊斬・斬殺斬!」
斬が魂を斬る──が、がしゃどくろは立ち上がる。
「私は頭以外にも魂がある。その全てを破壊しないと私は倒れん」
弾が呟く。
「これが本物の妖怪か……人を始末するのとは訳が違う」
がしゃどくろが再び構えた──その時。
「待て」
空気が凍る。ぬらりひょんが現れ、命令を下す。
「今回はこれまでにするのじゃ」
がしゃどくろは頭を下げ、姿を消す。
朝6時、新宿
都市は壊滅。
死者は10万人。 ニュースでは、刀と銃を持つ男たちが映っていた。
「殺し屋の仕業かもしれません」
疑惑がかかる弾と斬。 廃墟で、殺し屋組織のボスが怒鳴る。
「任務失敗に加え、この騒ぎ!処刑だ!」
武器を向ける──その瞬間、ぬらりひょんと鬼が現れる。
「弾達に手を出すなら容赦せん」
ボスは手を引き、姿は消えた。
「妖怪を始末する任務か。なら新しい武器を授ける。夜まで修行しろ」
「分かりました」
「次失敗したらガチで処刑するからな」
弾はその言葉にイラついた。
(なんだよ、だったら自分で行けばいいじゃないか……)
そう思いながらも、弾は銃を背負い直した。 斬は黙って刀を研ぎ始める。
命令に従うのは癪だが── それでも、あの夜の続きを終わらせるために、ふたりは再び歩き出す。
朝の光が、静かに彼らの背中を押していた。
その光の中で、ふたりの影はゆっくりと歩き出す。 まだ終わっていない。
だが、確かに何かが始まった──そんな気がしていた。
四章「山姥の言霊」に続く