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昼休み。返却された答案用紙を手にしたナマエは、にやにやと2階の出水先輩のクラスに詰め寄った。
『ねぇ出水先輩〜、数学何点だった〜?』
「……ふふん、聞いて驚くなよ?72点!」
『……へぇ〜?私、84点でしたけど?』
「……マジ?」
『マジで』
ナマエは答案用紙をひらひらと目の前で揺らしてみせる。
口角がニヤッと上がって、ドヤ顔全開。
「うわ〜、これはやられたわ〜」
『ねぇねぇ、先輩より私の方が頭いいってことは……これから“ミョウジ先輩”って呼ぶ?』
「それはやだ」
即答だった。
『も〜、釣れないなあ。じゃあ、ジュースくらい奢ってよ?“勝者のご褒美”ってことでさ!』
『はいはい、わかりましたよー』
出水はわざとらしく立ち上がって、ナマエに軽く頭を下げる。
「この出水、心よりジュースを献上させていただきます」
『よろしい!』
ふたりで笑いながら教室を出ると、日が差し込む廊下に影が伸びる。
『でもさ』
歩きながら、ナマエがぽつりと呟く。
『…ちょっと頑張ってみてよかったかも』
「ん? テストの話?」
『それもあるけど……なんかさ。誰かと一緒に頑張るのって、こういうの、悪くないなって』
「そっか」
隣を歩く出水が、ふわっと笑った。
「ナマエが笑ってんの、なんか俺も嬉しいわ」
『……そーいうの、ずるい』
「ん? なにが?」
『なんでもなーい!』
ふざけて歩幅を合わせず、ナマエは小走りで階段を駆け下りる。
そんな彼女を見て、出水は小さく笑ってついて行った。