テラーノベル
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ぽたぽた涙を落とす俺に付き添ってずっとmfくんは背中をさすってくれた。大好きな人が突然いなくなった悲しさや寂しさはどうやったって和らがないけど、優しい手つきからmfくんも俺と同じ思いをしているのが伝わってくる。
「…おじいちゃんに花あげたいな、渡すからおじいちゃんにお供えしてくれる?」
そう言ってmfくんを見上げると優しい声で「じいちゃん喜ぶと思う、俺も手伝うよ」と笑って言ってくれる。それから俺たちはおじいちゃんとの思い出話をしながら山に自生している花を少しずつ摘んでいって、あっという間にささやかな花束が出来上がった。mfくんにそれを渡しながら言う。
「…おじいちゃんにいつも美味しい果物ありがとうございましたって言っておいて」
「分かった伝えとく。お花ありがとうございます。……あー…あとさ、すごい言いにくいんだけど…俺明日東京に帰るんだよね…」
「えっ」
mfくんの残酷な言葉に漸く引っ込んだと思った涙がまたボロボロ零れだしてきた。ああー泣かないで、とmfくんはものすごく焦ったように言うけどそんなの無理に決まってる。mfくんの服をちょっと掴んで「帰らないでよ」と言うと心底困った顔をした。本当にひどい人だ。
「またすぐ来るから…約束する」
「すぐっていつ?俺おじいちゃんがいなくなって今こんなに悲しいし寂しいんだよ?それなのに放っておくの?」
そう言うとmfくんは何一つ悪くないくせに、ごめんと申し訳なさそうに言った。
次の日狐の姿でひっそりmfくんを山の麓から見送りに行くと俺の姿に気付いたmfくんがこちらに手を振って駆け寄ってきた。俺の足元に西瓜や枇杷をどっさり置いて、またなと呟いてから車に乗り込んでいく。遠ざかっていく車が見えなくなるまで俺はずっと見送った。
『またすぐ来るから』
嘘ついたらmfくんの枕元に怨念になって立ってやる。俺は本気だ。
コメント
3件
この話めちゃ好きです⋯!! 続き楽しみにdnと同じく正座で待機しております!