昼休みの教室は、生徒たちの声と笑い声が入り混じり、にぎやかで賑わっていた。
窓から差し込む柔らかな春の陽射しが、机や教科書の上に斑模様を作り出している。
陽向結羽(ひなた ゆう)は、その中にいた。
クラスメイトの輪の中で笑い声をあげ、友達に話しかけられれば自然に返事をする。
でも、その笑顔の奥には、小さな亀裂が広がっていた。
「結羽ちゃん、今日の放課後、みんなで帰ろうよ!」
「うん、楽しみ!」
明るく弾む声に、結羽はうなずきながら笑顔を返す。
その声は耳に届くが、どこか遠くで響くエコーのように感じられた。
目の前の友人たちは楽しそうに笑い合っている。けれど、その輪の中に自分が本当に溶け込んでいる実感はなかった。
隣に座る親友の咲良は、いつものように明るい表情をしているけれど、会話のテンポがどこか合わない。
咲良が誰かと話しているとき、結羽の視線は自然と彼女から離れ、遠くの教室の窓の外に向かう。
「どうして、最近はこんなに距離を感じるんだろう」
過去の楽しかった思い出が頭の中をよぎる。
中学に入ったばかりの頃、みんなで笑い合い、秘密を話し合い、何でも共有していた日々。
それが今では、まるで別の世界の話のように遠ざかっていく。
結羽は机に肘をつき、顔を手で覆った。
誰にも見られたくないけれど、涙がこぼれそうになるのを必死にこらえている。
「なんで、私だけ置いていかれるんだろう」
「どうして、みんなは普通に笑い合っているのに」
彼女の胸の内は、不安と孤独でいっぱいだった。
話しかけたいのに言葉が出ず、聞きたいことがあるのにどうしても尋ねられない。
そんな日々が、じわじわと心を蝕んでいく。
教室のざわめきの中で、結羽は自分だけがぽつんと取り残されている気がした。
それでも、彼女は強くいようと決めた。
「大丈夫、笑顔でいれば、また戻れるかもしれない」
そう自分に言い聞かせ、もう一度顔を上げる。
みんなの笑顔に合わせて笑い返し、声を出す。
「そうだね、放課後楽しみだね!」
その声は、明るく元気だった。
だけど、その内側では、静かに「さよならは少しずつ近づいている」という不安が広がっていた。
結羽は窓の外に目を向けた。
青空は広く、春の風が木の枝を揺らしている。
それは変わらずにそこにあるのに、自分の周りの世界は少しずつ変わっていくのだと感じていた。
彼女の心の中の空洞は、誰にも見えない。
でも確かにそこにあって、結羽を少しずつ蝕んでいた。
初投稿です!結構フィクション、、、、。第二話もお楽しみに! フォロー、いいね、お願いします!