「回復能力高すぎな?」
マイキーくんは俺の歩いている姿を見てつぶやいた。
「まあ、伊達に拷問されてるわけじゃないですし…。」
俺は肩を回してみせた。
「そうだ、タケミっち。」
「なんですか?」
「今日から、敬語禁止、な。」
…は!?
いきなり言われましても感。
だって、今の今まで敬語だったのに…。
「あと、くんもダメ。」
それはわがままだと思います、はい。
「さすがに言葉の人権はください…。」
すると、懐かしい単語と共に決定した。
「じゃあ、総長として、命じる。」
「関東卍會入ってませんけど…。」
「東卍総長。」
「東卍は解散しました。」
「ダメ。」
いつまでこの人のわがままに付き合えばいいんだか…。
「…分かりm…分かった。」
まあ、いいか。
なんだかんだ言って楽しいし。
…これがダメなんだよなぁ…。
振り回されるって、こういうことだから。
俺は、天を仰いだ。
「なんか、久しぶり感がすごい…。」
俺はつぶやく。
「だな。」とマイキー。
「今、お茶とか持ってくるな。」とココくん。
部屋に二人だけという、なんとも言えない状況下。
しかも、つい昨日、殺り合った仲だ。
「えーっと…とりあえず、ごめんなさい。」
俺は頭を下げた。
すると、マイキーが顔面めがけて膝蹴りをかましてきていた。
俺は、とっさに顔を上げる。
前にはマイキーの睨む顔があった。
そして、マイキーは話し始めた。
「当てる気はさらさら無いっての…それと、謝るなら、どらやきとたいやき買ってきて。」
そう言って、俺の前にお金を出してきた。
「ほら、これ使って買ってこい。」
半分パシリ…なのか…?知らないが、俺は言われるがままにお金を受け取り、買いにいった。
「えーっと、足りないものは…ないっと!」
正直言って、黒服の男がたいやきとどらやきを買っているとは思えないだろう。
しかも、買わされているという。
自分でも苦笑いしてしまうほどだ。
まあ、運動にもなったし、いいか。
俺は紙袋を持って、アジトへと足を速めた。
その時だった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
悲鳴?
俺はその方向へと足を進めてみる。
すると、そこには倒れこんだ一人の女子高生がいた。
周りには、ものすごい普通そうな一般人…いや、取り巻きだったのか?
生き残りの一人は、ものすごい「なにかしますよ!」と言っているような服を着ている男だった。
とりあえず、蹴っ飛ばして帰るか。
俺は、男のほうを蹴っ飛ばして退治した。
「強姦か、それとも殺害か…なんにせよ、不快だったもんだからな。」
俺はそう言って、男のほうの頭を蹴っ飛ばした。
今、両手が塞がってるんだ、蹴りだが我慢しろ。
俺は、もうアジトへと帰ろうと思い、踵を返した。
すると、女子高生のほうが声をかけてきた。
「あの…名前!名前、何!?」
「…俺?」
俺は少し困惑する。
そうやすやすと個人情報を教えることができないからだ。
万が一、通報なんてされようものなら、死刑は確定だろう。
「…あ、ジブンの名前は瓦城千咒!」
そういう問題ではない。
家庭の事情という言葉をこの子は知らないのか?
…まあ、下の名前だけならいいか。
「…武道。」
俺はそう答えて、アジトへと足を進めた。
「ふーん…瓦城千咒ってやつに…瓦城千咒!?」
そう言って、ココくんは目を見開いた。
俺は一切わかんないけど、なんか、すごい子を助けちゃったのかな…?
「そもそも、なんで驚いてるの?」
俺はココくんに聞く。
「いや、驚くも何も、今度抗争する梵(ブラフマン)の首領だぞ?」
…いや、情報量が多いって。
「えーっと、梵っていうチームがあって、そこの首領と仲良くなって…そこのチームとマイキーのチームが今度抗争する…ってことでいいの?」
俺は確認するが、誰も何も答えてくれない。
ねえ、ひどくない?
マイキーは、どらやきを俺の隣でほおばっている。
ココくんはぶつぶつ何かをつぶやいている。
そんなにでかい抗争なのか?
マイキーがどらやきを飲み込むと、俺に話した。
「…六波羅単題にも、そこで抗争を仕掛ける。」
はいまた別のチーム出てきたよ!
何だよ六波羅単題って!!!!
もう全部一緒にしか思えねぇよ、チーム多すぎて!!!!!
「最近はすごいんすね…。」
そう言うと、マイキーは話した。
「主軸の三つが戦うって、みんな関心が集まってるだけだ。」
「あ、主軸なんだ…主軸…主軸!?」
思わず口に出る。
マイキーは「そうだぞ?」と答えてたいやきをほおばる。
「なあ、少しいいか?タケミチ。」
ココくんが、俺に話しかけてきた。なんか久しぶりな気がする。
「何?」
「あのさ、うまくいったらでいいんだが、潜入捜査してくれね?」
「無理。俺もなかなかに忙しいんだから。」
「そうか…なんかごめんな。」
俺は、ココくんには悪いが、即答で切ってしまった。
実を言うと、ただ単にめんどくさい。
忙しいは忙しいが、めんどくさいのほうが勝っている。
…そして、俺はもうひとつ気がかりなことがあった。
春千夜くんのことだ。
俺が攻撃を喰らわせてから、一回も目を覚ましていないらしい。
簡単に言うと、植物状態らしい。
彼が一人っ子だから、親に恨まれるくらいで済むんだろうなー…とか思っていたが、そううまくもいかないらしい。
「…そういえば、春千夜くんって、兄弟とかいるの?」
「いるぞ?兄貴と妹が。」
いるんかい。
なんで隠したのかはあとで柚葉に解析してもらうとして、俺は少しだけ焦った。
なんであんなことしたんだろ…。
すこし、後悔した。
「時間、大丈夫?もう日が暮れるけど。」
もうそんな時間か…。
なんか、ここ最近、時間が過ぎるの早いなぁ…。
まあ、いいか。
「じゃあ、また明日。おやすみ。」
俺は別れの挨拶を言って、アジトを後にし、自宅へと帰った。
マイキー殺害まで あと 26日
コメント
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春ちゃん、マジか( ̄▽ ̄;)