[夜空に響く君の声]
涼架side
私は、自室のベッドに寝転がり、スマホをいじっていた。
午後9時を過ぎた頃、ふと若井からのLINEに気づく。
メッセージは一つだけ。
『今から、高原行こう。伝えたいことがあるんだ』
シンプルすぎるその文面に、私は首を傾げた。
普段、若井からこんな真剣なメッセージが来ることはない。
いつも『おい、暇か』と『今日の宿題むずくね』とか、どうでもいい内容ばかりなのに。
「……何、急に」
私は、若井の行動に呆れながらも、彼の言葉が気になった。
『伝えたいこと』って何だろう…
まさか…。いや、ないない。
私はスマホを閉じ、天井をじっと見つめる。
音楽大学の進路を決めてから、若井との関係に少し距離を感じていた。
彼は私の夢を応援してくれているけど、どこか寂しそうな顔をすることが増えた。
それは、きっと気のせいじゃない。
「行くわけないじゃん……」
そう呟きながらも、私はベッドから起き上がった。
そして、部屋のクローゼットを開ける。
着替えを用意しながら、再びスマホをみる。
若井からのメッセージは、それ以上来ていなかった。
(もしかして、返信待ってる?)
そんなことを考えていると、私は何だかおかしくなってきて、一人で笑ってしまった。
コンコンとドアがノックされる。
「涼架~、もう寝たの〜?」
母の声だ。
「まだ起きてるよ!」
私は声を張り上げ、素早く着替えを済ませる。
「どこか行くの?」
母が不思議そうに尋ねる。
「えっと、ちょっとコンビニまで。飲み物買いに」
涼架はそう言って、カバンに財布とスマホを詰め込んだ。
母は、涼架の嘘に気づいているようだったが、何も言わず、「早く帰ってくるのよ」とだけ言った。
家を出て、自転車に乗る。
夜風が少し冷たい。
私はスマホを取り出し、若井に電話をかけた。
ブルルル……プルルル……
「……もしもし」
若井の少し眠そうな声が聞こえた。
「若井、まさか家で寝てたわけじゃないよね?」
「いや、ちゃんと家出たよ。てか、お前本当に来るのかよ」
「行くに決まってるじゃん!若井が言ったのに!迎えにしなさいよ!」
「なんでだよ!」
「急に訳わかんないこと言い出す若井が悪いんでしょ!とりあえず、今どこ?」
若井は少し驚いたように「駅前」と答えた。
「わかった、今から行く。……ちゃんと待っててよ」
「わかってるよ」
電話を切って、私は少し微笑んだ。
夜空にはたくさんの星が輝いている。
「もう……本当に、しょうがないんだから」
私はそう呟き、自転車のペダルを強く踏み込んだ。
伝えたいことがあるのは、きっと若井だけじゃない。
この夜に、何かが変わる予感がした。
次回予告
[星降る夜の約束]
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コメント
1件
くっつけ〜!!!