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22章目行きます。
カガミジゴクの激しい戦いから逃げ延びた私たちは、いつの間にか、夕暮れの美術室へと迷い込んでいた。
キャンバスに描かれた、不気味で綺麗な塔の絵。
霊力の強い私は、その絵から放たれる圧倒的なの気配に眩を覚え、手の月のブレスレットをぎゅっと握りしめた。
「あら、いらっしゃい。新しいお客様ね」
絵の中からすうっと現れたのは、美術室の怪異、七不思議の四番ーーシジマさんだった。
彼女が絵筆をひと振りした瞬間、私たちの視界は真っ白な光に包まれ、世界がガラガラと作り変えられていく。
「…..ん、….ここは…..?」
次に目を開けた時、私はかもめ学園のまばゆい朝の教室にいた。
窓から差し込む光を浴びながら、私は自分の身体を見て目を見開く。いつも私を悩ませていた、あの「今にも消えてしまいそうな儚さ」が嘘のように消えて、身体がしっかりと現世に繋ぎ止められている感覚がした。
「露葉、おはよう!今日も髪色、綺麗だね!」「露葉ちゃん、お弁当一緒に食べましょ!」
寧々ちゃんと葵ちゃんが、楽しそうに私に手を振る。
さらに廊下からは、「菜さん、おはようございます!」と顔を真っ赤にした光くんが走ってきて、茜くんも「葵ちゃん、そして露葉ちゃんおはよう」とツンデレに挨拶してくる。
土籠先生も輝先輩も、みんな普通の人間としてこの学園に存在していた。
そして、何よりも。
「露葉、遅いよ。僕、待ちくたびれちゃった」私の左手首を、温かい手のひらがぎゅっと握りしめた。
振り返ると、そこには怪異の衣装(学ラン)ではなく、普通の緑色の中等部の制服を着て、類に札もない、生きている姿の普(天音)がいた。
「あまね…..?生きて、る…..?」
「何言ってるの?僕はここにいるよ。…..ねえ、この世界なら、君はもう消えそうにないね。僕の手を、ちゃんと握り返してくれる」普は落しそうに目を細めて微笑む。
けれど、その琥珀色の瞳の奥には、どこか底の知れない、ドロドロとした暗い執着が隠されていた。
「あははは!あまねだけずるい!露葉、俺ともお揃いの約束しようよ!」
後ろから無邪気に飛びついてきたのは、同じく生きている姿の司だった。同は私の薄青い髪に顔を埋め、逃がさないようにに腕を回して強く抱きしめてくる。
霊力が強い私は、すぐに気づいてしまった。
この優しくて温かい世界は、全部シジマさんが描いた『偽物の世界』なのだと。
そして、この世界を望んだのはーー。
「……気づいちゃった?」
普がクスクスと、優しく、だけど残酷に笑った。普の冷たい指先が、私の手首の月のブレスレットをそっと無でる。
「現実の君は、今にも消えちゃいそうだった。僕の腕をすり抜けて、どこか遠くに行っちゃいそうだったから…..。だから、僕は四番にお願いしたんだ。君が消えない、この理想の世界を作ってって」
普の顔が近づき、耳元で狂おしいほどの独占欲を孕んだ声が囁かれる。
「もう現実(あっち)には帰さないよ、露葉。僕たちと一緒に、この絵の中で、永遠に幸せ
に暮らそうね」
生きている双子、そして学園の全員が普通の人間として私を愛してくれる、優しくて残酷
な絵画の階。私の手首の三日月は、閉じ込められた私の運命をあざ笑うように、偽物の朝の光の中で、シャラリと甘く切なく鳴り響いていたーー。
コメント
1件
読んだわ! 今回のシジマさんの絵の中の偽物の世界、めちゃくちゃエモかった…!「消えそうな露葉を永遠に閉じ込めて離したくない」って普の狂おしい独占欲がひしひし伝わってきて、切なくてゾクゾクした。しかも露葉だけは「偽物」って気づいちゃう展開がもう…。強さの理由が霊力の高さにちゃんと紐づいてて痺れる。永遠の幸せを囁きながら現実に帰さないって選択、重すぎて泣けるわ…続きが気になりすぎる🔥
蜂蜜きな子
16
#犬
ここと🌹🫶 @低浮
203
みみ
49