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国見ぃぃ甘えてんのかわよすぎなぁい?
「……国見くんは? なんでここにいるの」
「……さあね。俺にもわかんない。ただ」
彼は私の手首を離すと、今度は私の制服の裾を、子供みたいにきゅっと握った。
「……体育館に行くよりは、ここにいる方が、ずっと意味があると思ってる」
題名 「 友達以上恋人未満_? 」
profile
高崎 優菜 「タカザキ ユナ」
1年2組
「国見?まぁ好きなんじゃない」「分かんない」
国見 英 「クニミ アキラ」
原作通り。
「分かんない」「疲れた」
オレンジ色に染まり始めた放課後の教室。
遠くから運動部の掛け声や、バレーボールが床を叩く「パンッ」という乾いた音が響いてくる。
「……ねえ、起きてる?」
隣の席で机に突っ伏している国見英の、さらさらとした後頭部に向かって声をかける。
彼は返事の代わりに、少しだけ肩を揺らした。
「国見くん。金田一くんが体育館で『英がいねえ!』って騒いでたよ」
「……うるさい。あいつの声、脳に響く」
ようやく顔を上げた彼は、寝癖のついた髪を雑にかきあげて、細い目をさらに細めた。
窓からの逆光で、彼の表情がよく見えない。
「行かなくていいの? 練習」
「効率悪い。……今日は、もう動けない」
彼はそう言って、私の机に自分の腕を伸ばしてきた。指先が、私の教科書の端に触れる。
「友達」として過ごす時間はもう長いけれど、時々こうやって、彼は無防備に私のパーソナルスペースを侵してくる。
「何、動けないって。おじいちゃんなの?」
「……君のせいでしょ。昨日、遅くまで通話付き合わせたの」
そう。昨日の夜、テスト前の勉強という名目で、結局深夜まで他愛もない話をしていた。
「もう切るよ」と言っても、彼が「まだ眠くない」と引き止めるから。
「それはお互い様。……ほら、これあげるから。シャキッとして」
私は鞄から、お徳用の個包装のチョコを取り出して、彼の手のひらに乗せた。
彼はそれをじっと見つめたあと、自分では開けようとせず、私に差し戻した。
「……開けて」
「……過保護にさせないでよ」
呆れながらも袋を切って、一口サイズのチョコを差し出す。
すると、彼は身を乗り出して、私の指先から直接そのチョコを啄んだ。
唇の柔らかな感触が、一瞬だけ指先に残る。
「……っ、」
「……ん。甘い」
彼は平然とした顔で咀嚼しているけれど、私は心臓が跳ねて、視線を泳がせることしかできない。
友達。私たちは、仲のいい友達。
何度も自分に言い聞かせてきたはずの言葉が、彼の指先が私の手首に触れた瞬間に霧散した。
「……ねえ。君はさ、なんで私と一緒にいんの」
唐突な問い。
国見くんは、私の手首を掴んだまま、じっと私の目を見つめた。
いつもは気だるげで、冷めているように見えるその瞳が、今はひどく熱を帯びているように感じる。
「それは……友達だし、話も合うし」
「……それだけ?」
掴んでいた指に、少しだけ力がこもる。
「効率」を何よりも重視する彼が、部活をサボってまで、ただの友達と過ごすはずがない。
そんな希望的観測が、喉の奥まで出かかって、飲み込んだ。
「……国見くんは? なんでここにいるの」
「……さあね。俺にもわかんない。ただ」
彼は私の手首を離すと、今度は私の制服の裾を、子供みたいにきゅっと握った。
「……体育館に行くよりは、ここにいる方が、ずっと意味があると思ってる」
彼にしては珍しく、少しだけ早口。
夕日のせいで、彼の白い頬が赤く染まっているのか、それとも別の理由なのか。
「……あと、五分。……五分経ったら、金田一のとこ行く」
「うん」
「だから、それまで手、繋いでて」
「友達」という言葉で武装していた境界線が、音を立てて崩れていく。
私は何も言わずに、机の下で、彼の少し冷たい指先を握り返した。
外から聞こえるバレー部の声が、今はとても遠い世界の出来事のように感じられた。