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港に着くと、倉庫の周辺は騒音に包まれていた。廃倉庫の外壁は、崩れかけていて、呪霊が隠れるには絶好の場所だ。
「ここか…」透は周囲を見渡し、周囲の空気に異様な重さを感じ取る。「呪霊が潜んでるのがわかる…でも、これだけじゃない。もっと強力なものがいる…」
「うん、私も感じる。これは単なる呪霊じゃないわ」
二人は倉庫内に踏み込み、そこで目にしたものに息を呑んだ。無数の小さな呪霊が蠢く中、倉庫の中央には異常なほど巨大な呪霊が座していた。その姿はまるで怨念が具現化したかのようで、黒く渦巻くオーラが周囲を覆っていた。
「これが…群れの主…?」
朱音が緊張した面持ちで呪霊を見つめる。「相当な呪力だ。今まで戦ってきたどんな呪霊よりも強い…」
透は呪具の「紫狼」を召喚し、構えを取る。「こんなところで負けるわけにはいかない。いくぞ、紫狼!」
紫狼が透の指示に従い、狼の姿に変わって呪霊へと突進した。だが、呪霊は動じることなく、一振りして紫狼を弾き飛ばした。
「強い…!」
紫狼が呪霊に跳ね返されると後退しざるを得なかった。朱音が素早く結界を展開する。「透、後ろは私が守る!先に仕掛けて!」
「わかった!」
透は集中し、呪力をさらに高める。紫狼の力を最大限引き出し、再び呪霊に向かって駆け出した。しかし、呪霊はまるで知恵を持っているかのように、透たちの攻撃をかわし、反撃に転じてくる。
「こいつ、ただの呪霊じゃない…まるで術式を使っているみたいだ…!」
その時、倉庫の天井が一瞬で崩れ落ち、光の閃きが呪霊に降り注いだ。
「また…神楽坂か?」
透がその光景に目を凝らすと、そこに立っていたのは神楽坂零ではなかった。全身に白い呪符を纏い、冷徹な表情で呪霊を圧倒する姿を見せたのは、呪術師本部のエリート、百鬼冴だった。
「ふん、この程度の呪霊に苦戦しているとは…」
百鬼は呪符を操り、呪霊を封じ込めていく。透と朱音は技量に圧倒されながらも、協力して呪霊に最後の一撃を加えた。
呪霊が消滅すると、百鬼は二人に向かって冷たく言った。
「これ以上足を引っ張るな。次は自分たちで解決するんだな」
彼女は一言も残さずその場を去った。透と朱音はその背中を見送りながら、再び自分たちの力の不足を痛感する。
「もっと…強くならないと…」
「そうだね。だけど、必ず強くなれるさ。今日の経験を活かして…」
二人は決意を新たにし、夜の東京に戻っていった。呪術師としての戦いは、まだ始まったばかりだ。