テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「この先一世紀も経たぬうちに、祖国は滅ぶかもしれない」
そんな不安を常に抱えながらも、それに対してどうすることも出来ず、今日も生きている私って、一体何なんでしょうね────そんなことを何となしに口にしたら、貴方はこう返してきて。
「それは俺の国もおんなじなんだぜ。下手したら、お前の国より先に滅ぶかもなんだぜ。それも恐らく、『北』との戦争でな。核兵器使われたらおしまいなんだぜ」
それ以前に、俺の国はお前の国よりも、どうしようもない問題ばかりだから────あっけらかんとした顔で、そんなことを言う貴方。
「そもそもそんな未来、心配したところでなんだぜ。始まりがあれば、必ず終わりがある。永遠なんて無いんだぜ。極端な話、明日巨大隕石が地球に落ちてきて、祖国どころか全てが無に帰す、なんてこともあるかもなんだぜ」
「…………本当に極端ですね」
「でもさでもさ、そういう風に宇宙規模で考えたら…………祖国の存続の心配なんて、 本当ちっぽけなもんなんだぜ。だから俺達、辛うじて恵まれている今を生きないと。どれだけ現実が理不尽でも、自分の人生を、大切にしないとなんだぜ」
そして、お前と巡り会えた奇跡もな────私をきつくきつく抱き締めた貴方の顔は、先程とはうってかわって、どこか悲しげで。