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善悪が声のした方向に目を向けると、そこには、すっかり様相を変じたキャサリン、キャスを先頭にした数多(あまた)の聖女、聖戦士の皆さんが怒りを露(あらわ)にして立っていたのであった。
揃って、頭髪や眉毛を失して、つるつる、丸ハゲ禿丸君になった男女は、その身に纏った様々な衣装も殆(ほとん)ど燃え堕ちた状態で、両の手で何とか大事な場所を隠して立ち尽くし、一転、顔面には『殺すっ!』としか表現出来ない程の激しい怒り、所謂(いわゆる)烈火の如く、阿修羅明王、身内で言えば、プンプンムカムカ状態のアジ・ダハーカしていたのであった。
「あー、ええとっ! 何? ど、どうしたの? キャス?」
慌てて問うた善悪にキャサリンは、コユキに比べると、結構控えめにムキィーっ! となりながら大声で告げた。
「どうしたじゃないわよっ! コーフクっ! アナタ可燃物使うのなら最初に言いなさいよっ! 見てみなさいよっ! 男共は兎も角! アタシたち見目麗しい女までつるつるピカピカ丸じゃないっ!! アナタ! どう責任取るって言うのよ!?」
ふむ、どうやら激怒(げきおこ)プンプン丸状態な様である……
さてどうする? 善悪?
「…… キャス…… いいや、キャスリン…… ガッカリでござるよ…… まさか自由と先進の象徴、ンナメリカ人の君にジェンダーフリーを話して聞かす日が来るとはね…… で、ござる!」
「っ!?」
――――アッ! シマッタッ!
キャサリンは一瞬で、自分が本国で声高く叫び続ける女性達の主張を、いやもう言っちゃおう、フェミニスト偏重な意見の人達を一気に敵に回す発言をしてしまった事を理解して、戦慄を覚えたのだったが、後ろから聞こえてきた声にギリギリで救われるのであった。
「おいっ! 馬鹿野郎! 女たちも男もあるかよ! 俺達の髪の毛どうしてくれるつぅーんだ? おい! ちゃんと返事しろや! このサル野郎がっ!!」
何やら白人、アングロサクソンっぽい大柄な男が叫ぶと、それを切欠(きっかけ)にやんややんや、ヤポンだ、チョッパリだ、日本鬼子だのの文句が大合唱になってしまった。
流石の善悪でもこれには辟易(へきえき)してしまい、こう思ってしまったのだ。
うるせぇなぁ、黙れよバテレンどもっ! と。
しかし、思ってしまったとしても、それを口に出して伝えるほど善悪は愚かではなかった。
そりゃそうだろう、伊達(だて)や酔狂(すいきょう)で、密教の厳しい修行を続けてきた訳では無い、辛抱強さには定評しかない、密教の沙門、それが善悪、その人である。
故に彼等の批判にこう答えたのである。
「ああ、ごめんごめん、まさか、戦いに於(お)いて、火攻めの可能性も考えない程の馬鹿揃いとは思わなかったでござるよ、次から、オマイラが勝手に来た時には、充分注意してあげるでござるよ! ん…… こうなると…… なんだろ? 足手まといって感じしかしないけど…… まあ、良いでござる! コンカイハ、ワルカッタネ、ツビバゼンネェ~」
善悪の気遣い百パーの言葉を聞いて、この場に集った聖戦士、聖女の全員は、禿げ上がった頭もそのままに衣装も燃えて半裸の状態で、心に強く思うのであった。
――――もう、ゼッテー助けに来てやんないっ!!
と……
この瞬間、善悪とコユキ、そして『聖女と愉快な仲間たち』が、運命の時まで、誰の手も借りずに戦わなければならなくなった瞬間なのであった……