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『そんなわけないよ。それなら、私の方こそ一緒にいて退屈じゃないかって心配だよ』
身長157cmの私からすると、柊君は20cmも高くてちょっと見上げる。逆に、柊君は右側から私を見下ろして、ニコって笑った。
『僕は今が1番幸せだよ。柚葉とこうしていられるだけで充分』
『本当に? すごく嬉しいけど、でも、柊君みたいな素敵な人の彼女が、こんな地味な私でいいのかなって』
恐る恐るの質問。
私は、左側からまた柊君を見上げた。
『柚葉に出会えて本当に良かったと思ってるよ。ほら、ドラマとかでよく使われるセリフあるでしょ。生まれてきてくれて、僕に出会ってくれてありがとうって。あれ、今の僕の気持ちだよ』
柊君の手にギュッっと力が入ったのがわかった。何だかすごくドキドキする。
『柚葉を生んでくれたご両親に感謝だね』
『私も、柊君のご両親に感謝だよ』
微笑みながら、2人で見つめ合った。
笑顔が可愛くて、どこまでも優しい柊君。
私こそ出会ってくれてありがとう……って、心から感謝した。
『僕には、柚葉の存在自体が生き甲斐なんだ。それくらい大切だよ。だから、ずっと一緒にいてほしい』
私が生き甲斐だなんて……
これ以上無い幸せな言葉。
『すっごく嬉しい。でも、1つ聞いていい?』
『ん?』
『私ね、やっぱり自分に自信なくて。だから、私なんかのどこを好きになってくれたのかなって、ずっと不思議で』
そう言った瞬間、柊君は立ち止まった。
そして、真正面からのぞき込むように私をじっと見つめた。
『………』
何か言ってほしいのに、柊君は黙ってる。
やっぱり好きなところなんて無いのかな……
私は、いたたまれなくて目をそらした。
『ごめん。柚葉の嫌いなとこ探してた。でも……無かったよ、嫌いなとこなんて。つまりは全部好き。上から下まで、中身も全部』
『柊君……』
あまりにも嬉しいセリフに、めちゃくちゃ恥ずかしくなって、私は両手で顔を覆った。
もう、本当、ズルい。
そんなのカッコよ過ぎるよ。
いったい私は、柊君のことを何回「カッコいい」って思えば気が済むんだろう。
『本当に全部好きだよ。うちの会社の入社試験で初めて柚葉を見た時から、ずっと可愛いって思ってた。優しい性格も、仕事を真面目にこなしてるとこも、全部好きだ』
嘘みたい……本当に?
『気づいたら、もうどうしようもないくらい柚葉を好きになってた。だからさ、告白する時も、コテンパンにフラレたらどうしようって、かなりびびってた』
『そんなこと……。私が柊君をフルなんて絶対に有り得ないよ』
こんなに甘い言葉を並べられて、言われ慣れてない私はいったいどんな顔をすればいいんだろ?
モジモジして困ってる私の手を、柊君はまた、優しく握ってくれた。
黙ってゆっくりと歩道を歩く2人。
心に熱いものが流れこみ、涙が溢れる。泣いてることを必死に隠しても、柊君にはすぐに気づかれた。
『柚葉』
空いている右手で頬の雫を優しく拭い、さりげなく自然に、私のことをギュッと抱きしめた。
『柊君……?』
アスファルトの上、他には誰もいなかった。
私達はお互いの温もりに浸り、しばらく離れることができなかった。この胸の高鳴り、きっと柊君には伝わっているだろう。
どうしようもないくらい無上の幸せを噛み締めながら、私は……
ずっとずっと、この人と一緒にいたい。
一生、寄り添って生きていたい――
そう、心から強く思った。