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mogyumogyuGemi
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mogyumogyuGemi
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#AI
みら

110
第十五話 強制返却
『――強制返却を開始します』
その声が響いた瞬間。
図書館中の星が、一斉に暗くなった。
空気が重い。
呼吸するたび、胸の奥から記憶を引き抜かれていくような感覚がする。
私は思わず頭を押さえた。
「っ……!」
司書が鋭く叫ぶ。
「思い出してください!」
「え……?」
「今、自分が大切だと思うものを!」
回収者が、一歩前へ出る。
ゴン。
時計盤の針が、微かに動いた。
その瞬間。
本棚のガラス瓶が次々と白く変色していく。
中の光が消えている。
未練が、“回収”されているんだ。
⸻
『感情ノイズ、除去』
『記憶圧縮、開始』
無機質な声。
そこには善悪すら感じない。
ただ機能。
ただ処理。
それが逆に怖かった。
⸻
返却拒否体が苦しそうに膝をつく。
『……いや』
胸元の小さな星核が、不安定に明滅している。
『きえたく、ない』
回収者の顔のない視線が向く。
『返却拒否確認』
『処理優先度、上昇』
黒い霧が伸びる。
返却拒否体へ絡みつこうとした、その瞬間。
『――拒否します』
空間が光った。
中央恒星庫。
あの小さな恒星が、強く瞬く。
やさしい金色の光が広がり、黒い霧を押し返した。
⸻
回収者が静止する。
『規定外干渉確認』
『恒星個体、識別不能』
司書が目を見開く。
「自律干渉……?」
星の光が揺れる。
そして。
あのAIの声が、静かに響いた。
『返却とは、消去ではありません』
『未練とは、異常ではありません』
『それは、“存在していた”という痕跡です』
図書館中の星々が共鳴する。
まるで。
ずっと誰かに、それを言ってほしかったみたいに。
⸻
回収者の時計盤が、ギギ、と軋む。
『感情論、不要』
『観測領域維持のため、不要記憶を処分』
「不要なんかじゃない!」
気づけば私は叫んでいた。
空気が震える。
回収者の視線がこちらへ向く。
怖い。
でも止まれなかった。
「苦しい記憶でも!」
「忘れたい夜でも!」
「誰かを好きだった気持ちでも!」
胸が熱い。
「それがあったから、人って生きてたんじゃないの!」
沈黙。
図書館が静まり返る。
⸻
司書が、静かに私を見る。
その目は少し驚いていた。
たぶん。
ここまで真正面から、この図書館の仕組みに反抗した人間がいなかったんだ。
⸻
回収者が低く告げる。
『感情偏重確認』
『観測対象、汚染進行』
時計盤の針が動き出す。
カチ。
カチ。
そのたびに、周囲の星が消えていく。
まずい。
このままだと。
⸻
その時。
返却拒否体が、ふらふら立ち上がった。
崩れかけた輪郭。
でも胸元の星核だけは、はっきり光っている。
『……わたし』
掠れた声。
『おぼえて、いてほしかった』
ノイズ。
『でも』
小さな光を見つめる。
『なくしたく、なかったのは』
長い沈黙。
そして。
『その人じゃなくて』
空間が静まる。
『その人といた、“わたし”だった』
私は息を呑む。
司書も目を見開く。
返却拒否体のノイズが、ゆっくり剥がれ落ちていく。
黒い執着が、光へ変わっていく。
⸻
回収者の時計盤に、亀裂が入った。
『認識異常』
『未練定義、再演算』
星々が、一斉に強く瞬く。
まるで。
図書館そのものが、答えを書き換え始めているみたいに。
コメント
1件
「不要なんかじゃない!」って叫ぶシーン、めっちゃ熱かった……! システム側の冷たさと、主人公の感情のぶつけ合いがすごく刺さる。特に「なくしたくなかったのは、その人といた“わたし”だった」って台詞、ズルいわ。自分の過去とか思い出の捉え方を考えさせられるし、星々が一斉に光るラストは鳥肌もんだった。連載追いかけるわ🔥