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それは、最初から嘘だった。
きっと、最初にそう言ってしまえば、
全部まとめて片づけられたのだと思う。
あれも、これも、
信じたことも、
疑ったことも。
全部、嘘だった、と。
でも私は、
そうしなかった。
信じていた時間は、
確かにあった。
誰かの言葉を。
自分の感情を。
見たはずの光景を。
それらが本当だったかどうかは、
今となっては分からない。
証拠は残っていないし、
周りも覚えていない。
それでも、
何もなかったとは言えなかった。
もし全部が嘘なら、
あのとき感じた重さは、
どこから来たのだろう。
怖さも、
期待も、
安心も。
作り物にしては、
あまりにも、ちゃんとしていた。
信じたから、
進めた日がある。
信じたから、
立ち止まれた瞬間もある。
それが嘘だったとしても、
私の選択まで、
嘘になるわけじゃない。
そう思いたかった。
たぶん、
嘘かどうかよりも、
大事なのはそこだった。
世界は、
説明をくれない。
正解も、
不正解も、
後からは分からない。
ただ、
信じたほうにだけ、
時間が積み重なっていく。
だから私は、
今日も選ぶ。
信じるか、
信じないか。
どちらを選んでも、
「最初から嘘だった」と
言えてしまうのなら。
それでも私は、
信じていたほうを、
自分のものにしたい。
嘘だったとしても、
それを選んだ私は、
ここにいる。
それだけは、
今も、確かだ。