「母さんは早歩きで優香に近づくとパシンと頬を叩いた。
「母さん!」
「ほら、翔ちゃん帰るわよ。」
母さんが俺の腕を掴んで後ろに引っ張る。
どうせいつも自習して帰りは八時過ぎなのに九時を過ぎたくらいでこんな警察沙汰にして、優香を叩いて、
俺の母親はこんな人だったのか。分かっていたけれど、あまりにも酷い。
優香、ごめん。
優香はしゃがみこんでしまっていた。
俺は母さんに引きずられながら優香のほうを振り返った。
優香は立ち上がろうとした。その時、ふらっと倒れ込むように海に落ちた。
「優香!!」
俺は母さんの腕を振りほどいて、走って、急いで海に飛び込んだ。後ろから警察の人も飛び込んでくるのが見える。優香はもうかなり遠く流されていた。
俺は必死の思いで肺がちぎれる程に泳いで優香の服を掴んだ。
事件から三日経って優香は目が覚めた。俺は警察の人に俺の家庭と、優香の家庭について優香が海に落ちた日に話していた。
警察の人も俺の母親がブツブツと言っていた言葉に違和感を感じたらしく、思ったよりすんなりと話を聞いてくれた。
その結果俺は親と離れて暮らすことになった。今は児童保護の施設にいる。
優香は目が覚めた時の家族との様子を見て決めるということになった。」
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