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海の紅月くらげさん
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その日の夜、私のスマホに一本の電話が入った。
ディスプレイには【歩くん】の文字。特に電話の理由が思いつかないけれど、なにかあったのかな。
「もしもし」
「おう! ……今、平気?」
夏休みに入ってから一回も会っていなかったので、久々に聞いた歩くんの声。なんだか落ち着く。
「うん、平気だよ」
「久々に聞く気がするな。ましろの声」
あ……同じこと思ってる。目を閉じると浮かんでくるのは、歩くんの眩しい笑顔。
「なんつーか……うん。 き、けて……よかった」
「ん? なに?」
「な、なんでもねー……です」
なんだろう。途切れ途切れでよく聞こえなかった。
「それよりさ、妹の見舞いにきてくれたんだってな」
「あ、うん! 終業式の日に」
「ありがとな。あいつ、喜んでた」
穏やかで優しい声。歩くんは今どんな表情をして話しているんだろう。
きっと歩くんのことだから、みちよちゃんのこと大事にしているいいお兄ちゃんなんだろうなぁ。
「それに和葉に花貰ったって、すげー嬉しそうにしててさ」
「うん、貰った時もすごく幸せそうに笑ってたよ」
向日葵みたいな眩しくて愛らしい笑顔だった。歩くんによく似ていて、和葉のことになると顔を真っ赤にしていて素敵な女の子。
「お前を連れて行ったの、和葉なんだってな」
「……うん」
『お前を九條泉から守ること』
和葉の言葉が頭を過る。あの言葉は本気だったのかな。
「つーか、なんで……二人で行くんだよ」
「えっと、私行き先を最初は知らなくって」
「次行く時は、俺も誘えよな」
次に和葉と会うときどんな顔をしたらいいんだろう。それに……みちよちゃんは和葉のことが好き、なんだよね。
「……うん」
「なぁ……何かあったのか?」
「え」
ぼんやりと考えていた私の思考が一気に現実に引き戻された。
「今日のお前、元気なくねぇか」
どうして、歩くんにはバレちゃうんだろう。今どんな表情しているかすらわからないはずなのに。
「そんなことないよ」
「わかりやすすぎ」
なんで歩くんは電話越しでもわかってしまうんだろう。家を出ていけと言われたあの日だって電話一本で異変を察知してくれて、息を切らしながら駆けつけてくれた。
「お前をそんな風にさせてるの、誰」
「……心配してくれて、ありがとう。でもね、今回はちゃんと自分で考えないといけないことだから」
こればっかりは頼っちゃダメだ。自分で考えて決めなくちゃ。