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あめ猫
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夜。
部屋は静か。
さっきまでの音は、もうない。
積み木も、そのまま。
途中で崩れた形のまま止まっている。
クールキッドは寝ている。
小さな呼吸。
規則的なリズム。
セブンはベッドの横に立っている。
いつもの位置。
確認するように、見ている。
「……寝たな」
エリオットが小さく言う。
少し離れた場所から。
「……ああ」
セブンは動かない。
視線も外さない。
数秒。
それからやっと、ゆっくり離れる。
リビングへ戻る。
エリオットもついてくる。
電気はつけない。
暗いまま。
外の光だけで十分だった。
「……さっきの」
エリオットが口を開く。
セブンはソファに座る。
「……見た通りだ」
短い返事。
説明する気はない。
でも、隠す気もない。
「触ってないのに動いてたな」
「……ああ」
「お前のやり方に似てる」
「……ああ」
会話は続く。
でも、淡々としている。
感情は表に出ない。
エリオットは少しだけ息を吐く。
それから。
「……正直に言うぞ」
声が少しだけ変わる。
軽さが抜ける。
セブンは何も言わない。
「心配してる」
はっきりと言う。
短く。
逃げない言葉。
「……何を」
「全部だな」
エリオットは壁にもたれる。
腕を組む。
「お前のことも」
一拍。
「クールキッドのことも」
静かな空気。
セブンは視線を落とす。
何も言わない。
「止めたいんだろ」
「……ああ」
「でも分かるんだろ」
「……ああ」
同じ答え。
でも意味が重い。
エリオットは少しだけ苦笑する。
「厄介だな」
「……最初から分かってた」
「いや、ここまでとは思ってなかっただろ」
セブンは黙る。
否定しない。
それが答え。
「……あいつ、楽しそうだったぞ」
ぽつりと。
「さっきのも」
セブンの指がわずかに動く。
「……ああ」
低い声。
「だから厄介なんだよ」
エリオットは少しだけ視線を上げる。
天井を見る。
「楽しいことって、やめさせにくいからな」
「……」
沈黙。
重くはない。
でも軽くもない。
その中で。
エリオットが、少しだけ間を置いてから言う。
「……俺さ」
セブンが顔を上げる。
「お前のことも、見てるから」
「……何だそれは」
「そのままの意味」
エリオットは視線を外さない。
「放っとくと、無茶するタイプだろ」
「……しない」
「する顔してる」
即答。
セブンは少しだけ眉を寄せる。
反論しない。
できない。
「だから来た」
エリオットは続ける。
「今日も」
「……頼んでない」
「頼まれてないから来たんだよ」
少しだけ笑う。
でもすぐに消える。
「あとさ」
声が少しだけ落ちる。
「クールキッドだけじゃない」
セブンの視線がわずかに揺れる。
「お前もだ」
「……」
「無理してるの、分かる」
「……してない」
「してる」
即答。
逃がさない。
セブンは視線を外す。
床を見る。
「……」
エリオットは少しだけ息を吐く。
それから。
少し迷うように。
でも結局、言う。
「……特別なんだよ」
セブンがわずかに反応する。
「何が」
「お前ら」
間。
「……とくに、お前」
静かに。
まっすぐに。
セブンは動かない。
「放っとけないっていうか」
エリオットは少しだけ言葉を探す。
「……見てたい、っていうか」
曖昧な言い方。
でも。
誤魔化していない。
「変な意味じゃない」
少しだけ付け足す。
「いや、変でもいいけど」
小さく笑う。
すぐに真顔に戻る。
「とにかく」
一歩だけ近づく。
「一人で抱えるな」
セブンの肩に視線を落とす。
「無理なら言え」
静かな声。
強くない。
でも、逃げ場もない。
セブンはしばらく何も言わない。
長く。
それから。
「……お前は」
ぽつりと。
「何なんだ」
エリオットは少しだけ笑う。
「ただのピザ屋」
「……それにしては踏み込みすぎだ」
「性格だな」
軽く言う。
でも。
その場を離れない。
セブンはゆっくり息を吐く。
視線を閉じる。
数秒。
それから。
「……帰るな」
小さく言う。
エリオットが少しだけ目を細める。
「泊まってくか?」
「……好きにしろ」
さっきと同じ言葉。
でも意味は違う。
許可じゃない。
受け入れ。
エリオットは軽く肩をすくめる。
「じゃあ遠慮なく」
ソファに腰を下ろす。
静かな夜。
隣に人がいるだけで、少しだけ変わる空気。
セブンは目を開ける。
横を見る。
エリオットがいる。
当たり前みたいに。
「……」
何も言わない。
でも。
ほんの少しだけ。
張り詰めていたものが、緩む。
完全じゃない。
でも、確かに。
一人じゃない夜になる。