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明け方。
まだ少し暗い。
部屋は静か。
——のはずだった。
布団が擦れる音。
クールキッドが目を覚ます。
「……ん」
まだ眠そうな顔。
でも、すぐにきょろきょろする。
隣を見る。
いない。
「パパ?」
小さく呼ぶ。
返事はない。
静かに部屋を出る。
リビングのソファ。
そこに二人。
セブンとエリオット。
背もたれに埋まって、座ったまま。
いつの間にか、そのまま寝ている。
距離が近い。
肩が軽く触れている。
無防備な状態。
クールキッドはそれを見る。
じっと。
数秒。
それから——
「……にや」
小さく笑う。
分かっているわけじゃない。
でも、“いつもと違う”のは分かる。
面白い。
そういう顔。
そっと近づく。
音を立てないように。
しゃがみ込む。
顔を覗き込む。
「……」
セブンは目を閉じたまま。
エリオットも同じ。
少しだけ表情が柔らかい。
クールキッドはまた笑う。
「……なかよし」
ぽつりと言う。
その声で——
エリオットが少し動く。
「……ん」
ゆっくり目を開ける。
ぼやけた視界。
最初に見えたのは、クールキッドの顔。
「……はよ」
まだ寝ぼけた声。
「にいに」
クールキッドが嬉しそうに言う。
「おはよ」
それから。
エリオットは状況に気づく。
肩。
触れている。
隣。
セブン。
距離。
「……」
一瞬、固まる。
完全に理解する。
「……近」
小さく呟く。
ゆっくり体を離す。
セブンはまだ寝ている。
珍しく深い。
クールキッドはその様子を見て、またにやにやする。
「にいに」
「ん?」
「パパと、ぴったり」
「……うるさい」
エリオットが小さく返す。
でも声は強くない。
むしろ少し照れている。
そのとき。
——ピピピ、ピピピ。
音。
でもどこかおかしい。
リズムがズレている。
止まらない。
「……ん?」
エリオットが眉を寄せる。
ポケットからスマホを出す。
画面。
アラーム表示。
でも時間がバグっている。
「……は?」
表示がぐちゃぐちゃに切り替わる。
秒が逆に進む。
止まる。
また動く。
「なんだこれ……」
同時に。
壁の時計。
カチ、カチ——
止まる。
急に進む。
また止まる。
「……おい」
エリオットの声が少しだけ変わる。
セブンが目を開ける。
「……何だ」
まだ低い声。
寝起き。
「時間おかしい」
スマホを見せる。
セブンの目が一瞬で覚める。
画面を見る。
時計。
部屋。
そして——
クールキッド。
小さな手。
空中で、ほんの少し動いている。
遊ぶみたいに。
「……やめろ」
低く言う。
クールキッドがぴたりと止まる。
「パパ?」
無邪気な声。
その瞬間。
スマホの表示が戻る。
時計も正常に動き出す。
静かになる。
「……」
エリオットは一連を見ている。
理解するのに、時間はかからない。
「……マジかよ」
小さく呟く。
スマホを見る。
時間。
「……やば」
顔色が変わる。
「俺、遅刻」
一気に現実に戻る。
立ち上がる。
「ごめん、行くわ」
急いで靴を履く。
クールキッドが見上げる。
「にいに?」
「また来る」
短く言う。
ドアに向かう。
その前に。
一瞬だけ振り返る。
セブンを見る。
何も言わない。
でも目だけで伝える。
“任せた”みたいに。
そして出ていく。
ドアが閉まる。
静寂。
セブンはしばらく動かない。
それから。
ゆっくりクールキッドを見る。
「……触るな」
低く言う。
クールキッドは少し考える。
それから。
「……うん」
頷く。
でも。
完全に分かっているわけじゃない。
その顔で。
セブンはそれを見ている。
長く。
深く。
朝の光が少し強くなる。
普通の一日が始まる。
でも。
“普通じゃないもの”も、確実に一緒にある。
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