テラーノベル
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絵と内容はあまり関係ありません😅
私の故郷は、雪など滅多に降らない温暖な地であった。たまに白いものが舞おうものなら、子供たちが狂喜乱舞して庭を駆け回る——そんな「雪への耐性ゼロ」な環境で私は育った。
そんな私は、人生に一度ぐらいスキーをやっておこうと「スキー合宿」に参加した時の話です。
え?そうです。スノボではなく「スキー」です。
当時の私のスペックを正直に申し上げよう。
装備: スキー板と靴を、なんとか自力で装着できる。
知識: 「スキー」という競技をテレビで観たことがある。
以上である。
リフトに乗る行為すら恐怖を感じていた私は、当然ながら初心者グループに配属された。
レッスン内容は「ハの字(プルークボーゲン)」で亀のように進むこと。
それでも止まれず、ふかふかの新雪に顔面から突き刺さるのが私たちグループの止まり方だ。
しかし、事件は起きた。
あろうことか、引率のコーチがコースを間違えたのである。
(繰り返すが、これはギャグではない。実話である)
一寸先は闇、ならぬ「一寸先は崖」。
霧が晴れたとき、私たちが立っていたのは、あの大舞台——某県オリンピックの公式大回転コース(実際のコース)の頂上であった。
「……ひぃいいいいい!!」
初心者メンバーの悲鳴が、冷たい風に吹っ飛んでいく。
見下ろせば、そこにあるのは斜面ではない。
もはや「壁」だ。重力という概念が牙を剥いている。
しかし、一度コースに出てしまった以上、重力に従って降りる以外の選択肢は残されていない。
私たちは決死の覚悟で、5人ほど連なってゲレンデの端から端へ、ヨタヨタと横断を開始した。
その横を、本物のスキーヤーたちが時速◯キロ(体感では音速)の猛スピードで、邪魔くさそうに通り過ぎていく。
例えるのであれば、そう…
バイバスで自転車に乗る怪しいハンドル捌きの……あんな感じ
私たちは文字通り「大回転(※物理的な転倒)」を繰り返した。
どんなに踏ん張っても滑るスキー板、大の字で斜面にしがみつき滑り落ちていく仲間…
もはやスキーをしているのか、斜面を削っているのか分からない。
未だに、あの時の恐怖は忘れられません。
ボロボロになりながら、なんとか下界のロッジに辿り着いたとき、私の魂は半分ほど口から漏れ出ていた。
震える手ですすった温かいスープ。
その五臓六腑に染み渡る慈愛に満ちた味を、私は一生忘れることはないだろう。
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