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「クソ!どこ行きやがった!」
「逃がすな!殺せ!」
「探せ!絶対に見つけるんだ!」
深い夜の森で銃を持った男達の怒号が飛び交う
私は肩を震わせた…森の中を走って逃げながら祈る祈るしか無かった、見つかったら殺されてしまう
嫌だ!死にたくない!なんで私が!
色々な思いが頭の中を走り続ける、そのせいで逃げた先が崖になってる事に気がつけなかった
「そんな!どうすれば!」
「居たぞーー!!!」
「え…」
バンッ!
理解する時間すら無かった…
鈍い銃の音が聞こえたと思ったら、私の体から力が抜けていた
「ウ、ソ…」
次に感じるのは胸から感じる熱さ
本当に熱い訳ではない、撃たれた傷が そう感じさせるのだ
「当たった!!!」
「どこだ!!」
撃った男の声で他の追っ手が集まってくる
「どうして…」
膝を着いた私には逃げる力は無かった
そのまま倒れた私は目の前に合った崖に落ちていった
「あの悪魔は?」
「撃ったら崖に落ちやがった」
「この高さなら生きては居ないだろ」
「悪魔め、いいザマだ」
「帰るぞ」
そんな会話して男達は帰って行った
村外れの家、そこが私の家だった…
親の顔は覚えて居ない、物心ついた頃には死んだと祖母から聞かされていた
祖母には生きる術を教わった…山の食べ物や薬草の使い方、狩りに畑、道具の治し方から家事全般、そして魔法
どれも私には必要な事だった、厳しかったけれども今では感謝している、そんな祖母も今は もう居ないけど教えて貰った知識で生きれてた
そして私は19歳になった
いつも通り畑に水をあげ山菜と薬草を取り必要ない分を村に売りに来ていた
「また来たのか?アウター(はぐれ者)」
振り向くと同い歳の青年が立っていた
名前はグレイ、昔から村の外れに住んでいる私をアウターと呼び邪魔者扱いしていた
「関係ないでしょ」
私は それだけ言って薬草と交換した消耗品を持って帰ろうとする、そんな態度が勘に障ったのかグレイが気を荒立てた
「お前みたいなアウターが居るだけで迷惑なんだよ!さっさと魔物にでも喰われちまえ!」
そう叫んでるグレイをよそに私は村を後にした
知ってる、グレイだけじゃなくて村の人達が私を不気味がっているのを…魔物との間に生まれた子供なんて言われてる…真実は知らない物心ついた頃には親が居なくて祖母に聞いても そんな事ないって言うだけだったから…
家に帰る途中で足跡を見つけた
それは今までに見た事のない大きさだった
「魔物の足跡?こんなの見た事ない大きさ、村に知らせないと…」
そう思い私は村に戻り村長さんに知らせることにした
「そんなにも大きな足跡とわ…」
村長さんは年老いてはいるけど村人に頼られて居た
「俺の家で何してやがるアウター」
後ろのドアを開けて入って来たのはグレイだった、そうグレイは村長さん の孫なのだ
(タイミングが悪い)
「辞めんか!今は大事な話の途中じゃ!」
怒られたグレイは不機嫌になりながら出ていった
「それで場所は どの辺に?」
村長さんが足跡の場所を聞いてきた
「この村から森へ続く道を少し行った所です」
私が そう言うと人手を集めて調べてくれる事になった、そして私は挨拶を済ませて帰る事にした、危ないから村に泊まりなさいと言われたが村人の視線が辛いので断った
それに狩りの経験で危険を避ける方法を知っているので1人の方が安全だったのだ
次の日、私は村の様子を見に行った
それが間違いだった…村は魔物に襲われてボロボロになっていた、村長の家の前に布をかぶされた人が5、6人ほど並んでいた
その中の1人の所でグレイが泣いていた、背中ごしに見えたのは村長さん だった…
私は思わず口元に手をやった、冷たい村人の中で村長さん だけは普通に接してくれていた、祖母と同じ恩人と呼んでも良い人だったのに
そんな私にグレイが気づいた
「アウター!!!お前のせいだ!!お前のせいでジジィが死んだ!!!」
グレイは辛い気持ちを ぶつける様に私に叫んできた、その気持ちは分かるけど…
そんなグレイの声に村人が賛同した
「そうだ!お前が魔物を呼んだんだ!」
「魔物との子、悪魔め!」
「森に住んでるお前が無事なのが証拠だ!」
何かを言う暇も無く次々と怒号が浴びせられる
誰かが言った「殺せー!!!」
それを聞いた瞬間、私は走り出した…逃げないと殺される
ポチョン…ポチョン…ポチョン…
体の感覚が無い、何も見えない
崖から落ちた私には水滴が落ちているであろう音しか分からなかった
(そうか…私、死んじゃうんだ)
そう思った瞬間、心の中を悔しさと憎悪が巡って行った
(なんで私が!私は ただ普通に暮らしたかっただけなのに!許さない…絶対に許さない!!)
体は動かず目も見えない、でも心は黒く黒く染まっていった…
(殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!…)
どれくらい経ったのか一瞬だったかも知れない、それでも私には永遠に思えた、その時
叶えてあげるよ
誰も居ないはずの崖の底で確かに誰かの声が聞こえた…