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あーもう、この2人……!「お前がいない未来のほうが嫌だ」って、ライがようやく迷いなく言い切ったのがめちゃくちゃ刺さったわ。ずっと中途半端だったって認めて謝るところも含めて、19話かけてここまで来たんだなって感慨深い。 ロウの登場で空気がちょっと軽くなったのも良かった。「顔が貴族すぎる」のツッコミ、思わず笑ったよ。逃げてるのにちょっとだけ温かい空気になるこの感じ、しろまるさんのバランス感覚好きだわ。 続きが気になるけど、この束の間の安らぎ、ちゃんと記憶に刻んでおくね🔥
山の風は冷たかった。
けれど、繋いだ手だけは温かい。
伊波ライ と 緋八マナ は、川辺のそばへ腰を下ろしていた。
昔、二人が初めて言葉を交わした場所に少し似ている。
違うのは、もう後戻りできないことだった。
「……ほんまにええん?」
マナが小さく聞く。
ライは隣で静かに空を見上げていた。
「何が」
「全部捨てるん」
その問いに、ライは少し黙る。
遠くで鳥の鳴き声がした。
「怖くないわけじゃない」
やがて落ちた声は正直だった。
「父上も、家も、俺を育ててくれた人たちもいる」
マナは胸が痛くなる。
ライは何も持たないわけじゃない。
むしろ、多くを背負っている。
それを全部捨てる決断がどれほど重いか、マナには想像もつかなかった。
「でも」
ライがマナを見る。
その紫の瞳は、もう迷っていなかった。
「お前がいない未来のほうが嫌だ」
真っ直ぐな言葉だった。
マナは堪えきれず、目を伏せる。
嬉しくて、泣きそうになる。
するとライが、ふと笑った。
「本当はもっと早く決めるべきだった」
「……?」
「お前を手放したくないって」
マナは目を瞬く。
ライは少し苦しそうに笑う。
「ずっと中途半端だった」
家も捨てきれず。
マナも諦めきれず。
そのせいで、結局どちらも傷つけた。
「……ごめん」
ぽつりと零れた謝罪。
マナはすぐ首を振った。
「謝らんで」
自分だって同じだった。
離れたほうがいいと分かっていたのに、会いたかった。
何度もライを求めてしまった。
「俺も、ライとおること諦められへんかった」
二人で苦笑する。
きっと似た者同士だった。
その時。
ガサ、と背後の茂みが揺れた。
二人の体が同時に強張る。
ライが咄嗟にマナを庇うように前へ出た。
だが現れたのは、刀を肩へ担いだ 小柳ロウ だった。
「うわ、すげぇ警戒されてる」
「ロウ!」
マナが駆け寄る。
ロウの肩には包帯が巻かれていたが、思ったより元気そうだった。
「無事やった……!」
「おう。死ぬほどじゃねぇ」
ロウは軽く笑う。
ライは少しだけ肩の力を抜いた。
「助かった」
ロウが眉を上げる。
「ちゃんと礼言うんだな」
「言う」
「真面目かよ」
ロウは吹き出した。
だが、すぐに表情を引き締める。
「笑ってる場合じゃねぇぞ」
空気が変わった。
「追手、増えてる」
ライの顔色が変わる。
「……どの辺まで」
「山を封鎖し始めてる」
マナの背筋が冷える。
そこまで。
ライの父は、本気だった。
ロウは地面へ簡単な地図を描く。
「このまま北へ行けば、隣国に抜けられる」
指先で道を示す。
「ただ、その前に関所がある」
ライが目を細めた。
「簡単には通れないな」
「特にお前」
ロウはライを見る。
「貴族の顔なんてすぐ割れる」
確かにそうだった。
ライは有名だ。
顔を知られている可能性も高い。
沈黙が落ちる。
するとロウがニヤリと笑った。
「まぁ、方法がないわけじゃねぇけど」
マナが顔を上げる。
「ほんま!?」
「危険だけどな」
ロウは楽しそうに言う。
嫌な予感しかしない。
「……どんな方法」
するとロウは当然みたいに言った。
「変装」
「へんそう」
「お前ら、そのままだと目立ちすぎ」
ロウはライを指差す。
「特にこいつ、顔が貴族すぎる」
「顔が貴族って何」
マナが思わず突っ込む。
ロウが吹き出した。
「そのまんまの意味」
ライは少し不服そうだった。
だが、久しぶりに少し笑えた気がした。
逃げている最中なのに。
未来なんて分からないのに。
それでも今、隣にライがいる。
その事実だけで、マナの胸は少しだけ軽くなっていた。