テラーノベル
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府中本町駅で数分間停車した後に、機関車は再び走り始めた、駅の係員との手続きが思いのほか手間取ったものの、特に怪しまれることもなくー槇村内閣が発令した大規模テロ警戒警報により、首都圏鉄道網は自衛隊機材貨物に限り運行が許可され、鉄道中央司令所は山手線、中央線、総武線、武蔵野線、京浜東北線、横須賀線の区間を国に開放した。これにより、貨物列車や要人を乗せた特別車両のみが東京への出入りを許されたー
EF210機関車の速度は、60キロを保ちながら武蔵野南線へと進入していった。
この路線は、平時でも旅客運搬用して使用されており、駅の路線図には載っていない幻の区画としてマニアの間では有名だった。
大半を長いトンネルで締める南線の先に、梶が谷貨物ターミナル駅が存在していた。
この駅は現在、中央新幹線施設工事が進められていて、それと同時に緊急時輸送網拠点基地建設も秘密裏に進められていた。
梶が谷ターミナル駅から、地下トンネルを通じて品川駅へと直結する路線は既に完成しており、首都防衛1号線と名付けられていた。
また、将来的には山梨県や静岡県の駐屯地への物資運搬網としての役割も期待されていた。
加瀬と鷹野は、採光窓に映る互いの顔を見ながら話していた。
トンネルに閉ざされた空間で、機関室に漂うオイル臭は不思議とふたりを安心させた。
仕事の匂いがそこにはあった。
加瀬は摂津に語りかけるつもりで、鷹野に尋ねた。
「なあ鷹野君、人間は増えすぎたと思わないかい?」
「いえ」
「そっか」
「増えすぎたと思うから…東京ジェノサイドは肯定されるべきだとお考えですか?」
「どうかな」
トンネル内の灯りが、点から線へと変化していく。
「鷹野君、私はね…仲間を守りたいだけさ。見捨てられた仲間をね」
加瀬の言葉に、鷹野は直ぐに答えた。
「救える命を守りたいでしたら、私もそうです」
加瀬の嗅覚に、あの時の摂津の血の匂いが蘇る。
それさ、オイル臭と重なっていた。
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