テラーノベル
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一祟が小さく首を傾けた。
「エボル・コード……それは、一体どういうものなんですか?」
原田はしばらく黙り込んだ後、重い口を開く。
「簡単に言えば――”人間を進化させるウイルス”だ」
その言葉が落ちた瞬間、部屋は静まり返った。
「進化……?」
唯我が低く呟く。
「まさか、それを……自分に投与したんですか?」
「……あぁ」
原田は静かに頷いた。
「常人には到底耐えられない。劇薬どころではない危険な代物だ。それでも鷹野は”進化”を信じ、自らの身体へ取り込んだ」
「……そして、アビスのボスになったってわけか」
畑中が冷静に言う。
「つまり今回の任務は、原田さんを保護するだけじゃない。”エボル・コード”の正体を突き止めることも重要になる」
公太は腕を組み、渋い顔をした。
「でもよ……もう手遅れなんじゃねぇのか? そいつ、もう人間じゃねぇんだろ?」
原田は静かに目を伏せる。
「……そうかもしれない。彼はもう、人間を超えた存在になっている」
少しだけ間を置き――
「だが、”エボル・コード”には致命的な弱点がある」
全員の視線が原田へ集中した。
唯我が一歩前へ出る。
「……弱点?」
原田はゆっくりと頷いた。
「そうだ。”エボル・コード”には、ある一点だけ決定的な欠陥がある」
部屋の空気がさらに張り詰める。
――数分後。
原田は、その弱点について詳しく説明した。
「なるほど……」
話を聞き終えた畑中は、すぐに端末を操作する。
『エボル・コードの弱点が判明した。詳細は後ほど送る。至急、対策を進めてくれ』
『了解したわ』
通信越しのジュリーが真剣な表情で頷く。
『こちらもすぐ動く』
通信が切れる。
畑中はゆっくりと原田へ向き直った。
その目は厳しく、しかし責任を背負わせる覚悟を宿していた。
「原田さん。騙されていたとはいえ、あなたの研究が多くの命を危険に晒したのは事実です」
原田は何も言えず、拳を強く握る。
「あなたの協力によってアビスは生まれた。そして責任から逃げ続けた」
「……分かってる」
震える声が漏れる。
「全部……分かってるんだ」
畑中は静かに告げた。
「ならば償ってください。あなたの知識、その全てを我々に貸してもらいます」
しばらく沈黙が流れる。
そして原田は、深く頭を下げた。
「……あぁ。俺にできることは全部やる。もう逃げたくない」
その瞳には、確かな決意が宿っていた。
畑中は一度だけ頷く。
「ここを出る。原田さんの存在が知られる前に基地へ戻るぞ」
「やっと帰れるのか」
公太が大きく伸びをする。
「ですが、油断は禁物です」
一祟が静かに周囲を警戒する。
「……まぁな」
唯我も視線を巡らせ、気を緩めない。
畑中がドアノブへ手をかけた――その瞬間。
ドォンッ!!
建物全体を揺らすような衝撃音が響いた。
扉がゆっくりと開いていく。
暗闇の中から姿を現したのは――
先ほど逃げた、二人のアビス兵。
公太の目が鋭く光る。
「……来やがったな」
唯我は静かに剣を構える。
一祟は原田をかばうように一歩前へ出た。
畑中は冷静なまま、短く告げる。
「……全員、戦闘準備」
張り詰めた空気の中――
再び、戦いの幕が上がる。
コメント
1件
「エボル・コードの弱点」ってところで畳みかけるような説明の流れ、めちゃくちゃ引き込まれました。特に原田さんが『もう逃げたくない』って決意を固めるシーン、震えが伝わってくるようでした。畑中さんの厳しさの中にある信頼の言葉も好きです。最後の扉が開く衝撃で一気に戦闘モードに――また次が気になりますね!
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