平和な午後。神域のメンバーたちは、それぞれの持ち場で任務や業務に取り組んでいた。零も、例によって特に何もせず、本部の休憩室でのんびりしていた。
「おーい、ルナ、何か飲み物持ってきてくれない?」
零はソファに寝転びながらルナに向かって手を振ったが、ルナはそれを完全に無視して資料に目を通している。
「零さん、自分で取りに行ってください。それが普通です。」
「えー、俺、重傷患者なんだよ? まだ全快してないんだし、少しくらい労ってくれてもいいんじゃない?」
零がふざけた声を出していると、ガイアが冷たい視線を投げかけた。
「重傷? どの口が言ってんだ。昨日から普通に走り回ってただろ。」
零が何か返そうとした瞬間だった――
突然、建物全体が大きく揺れ始めた。壁の額縁が傾き、机の上の資料が床に散らばる。
「地震!?」
ガイアがすぐに叫ぶと、ルナは手近な棚を押さえながら状況を確認しようとした。
「こんな揺れ方、ただの自然災害じゃない!」
零は最初こそ驚いていたものの、すぐにふざけた調子を取り戻し、ゆらゆら揺れる中で平然と立ち上がった。
「んー、やっちまったかもな。」
「えっ?」
ルナとガイアが同時に零を見つめた。
「だってさ、さっきちょっとだけ試してみたんだよね、俺の“アレ”。そしたら――」
「お前が原因か!!」
ガイアが怒りの声を上げるが、零は苦笑いを浮かべながら肩をすくめた。
「いやいや、違うって。多分、半分くらいは偶然だよ。ほら、たまたまタイミングが被っただけってやつ?」
「信じられるか!」
ルナが本気で怒り始める前に、さらに大きな揺れが部屋を襲った。
本部の外では、建物が耐震構造のおかげで無事なものの、周囲の街はかなりの混乱に陥っていた。道路には亀裂が入り、人々がパニックになっている様子が窓越しに見える。
「これ、放っておくとやばいね。」
零は窓際に立ち、外の景色を眺めながら呟いた。
「零さん、あなた、本当に…!」
ルナが言葉を続けようとした瞬間、通信機が鳴り響いた。
『緊急連絡班です! 街の地下から異常なエネルギー反応を検知しました!』
「地下?」
ルナが顔を上げると、零は楽しげに笑っていた。
「ほらね、俺じゃないでしょ? でも、行くしかないね!」
「お前の異能が引き金になったんじゃないのか!?」
ガイアが再び叫ぶが、零は既に窓から飛び降りていた。
地震の中心とされる地下施設。零、ルナ、そしてガイアが駆けつけると、そこには奇妙な装置が作動している様子があった。
「これ…自然の揺れじゃなくて、完全に人工だな。」
ルナが装置を睨むように見つめる中、零は適当にその辺を歩き回りながら言った。
「なるほど、誰かがこんな面倒なことしてるってわけか。俺たちを呼び寄せるためとか?」
「軽く考えるな!」
ルナが叱責するが、零は全く気にしていない様子で装置のスイッチに手を伸ばした。
「とりあえず止めとこっか。」
「待っ――!」
スイッチを押した瞬間、施設全体がさらに大きく揺れ始めた。
「おいおい、またやっちゃったかな?」
零の声は揺れの中でも妙に楽しげだった。
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