TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

池袋へ繰り出した俺たちは、夕食に豪華しゃぶしゃぶをご馳走になった。


場所は東池袋ヤーマダ電機の7階しゃ○菜。しゃぶしゃぶ食べ放題のお店だ。


いやー、しゃぶしゃぶなんて久しぶりだから、めっちゃくちゃテンションが上がってしまった。


シロもメアリーもお肉がたくさん食べられて良かったな。


共にブンブン尻尾を振ってご満悦のようすだ。(他の人には見えないけど)


猫舌のチャトは大変そうだったが、マリアベルと楓 (かえで) が横で世話してたので大丈夫だろ。


食事のあとはヤーマダ電機の前で解散となったが、女性たちは連れだってサンシャインシティの方へ行ってしまった。


まあ、そこらのブティックで服を見たり、おいしいデザートでも食べてくるんだろう。


別れる間際、マリアベルにそっと10万円入りの封筒を渡しておいたので、少々買い物をしたとしても足りるだろう。


さて、残された男二人だったが。(シロも一緒です)


剛志 (つよし) さんはおちょこを持った手を右手でつくり、くいっと呑むしぐさをして、


「じゃあ男 (ヤロー) 二人はその辺で一杯いくとしますか?」


「おおっ、いいですね~。今日はパーといきましょう!」


(うわ――っ懐かしいなぁこのノリ。今でも飲み会って聞くとワクワクするな)


二人で掘りごたつ席のある居酒屋へはいり、ほどほどに飲んで語らった。


シロも足元から顔を覗かせては飲んだり食べたり楽しそうだった。






翌朝、


東京ディズ○ーランドに向かうため、俺たちはホテル前に集合していた。


「おーし、みんな居るなー。あれっ、メアリーその帽子は?」


「えへへ、昨日買っちゃった。紗月 (さつき) とお揃いなんだよ!」


メアリーの頭には黒い帯リボン付きの麦わら帽子がのっている。


所謂カンカン帽というやつだな。夏のお出掛けにはピッタリな帽子だ。


そして驚いたことに、マリアベルのお父さんがワンボックスカー (レンタカー) を用意してくれていたのだ。


――これはありがたい。


これなら面倒な乗り換えいらずで、ダイレクトに目的地まで行けるからな。


女性が多いと、いろいろと気を使うしな……。本当、剛志さんには感謝である。


みんなで車に乗り込み、一路舞浜に向けて出発!


朝の首都高は、お盆だからかスイスイ進んでいく。


右手に皇居のお堀を眺めながら車はさらに進んでいく。


湾岸線に乗っかれば、舞浜はもう目と鼻のさき。


結局40分程で現地に到着。オープンまでは、まだ1時間半もある。


だけど車を駐車場にいれ、いざ入口のゲート前までいってみると既に結構な行列ができていた。


(さすがにお盆ということだろうな。今日は中も人が多くて大変だぞ)


「みんなでお喋りでもしながら待っていればあっという間よー」


お母さん (久実さん) はラップに包んだサンドイッチをみんなに配っている。


パーク内では持ち込んだ物は食べられないようになっているのだが、ここはギリギリセーフなのかな。


(おっ、俺の好きなタマゴサンドじゃないか。いただきまーす!)


今朝、早起きして作ってきたんだろうなぁ。感謝しながらおいしく頂きました。


どこで買ってきたのか? 紗月とメアリーは一緒になって【るるぶ】をめくっていた。


マリアベルは楽しそうに家族とお喋りしている。


キロは俺の傍をつかず離れずといったところだな。


一見クールに見える彼女 (キロ) だが、近くにいる女の子が付けた ”ミニ―のカチューシャ” がとても気になるようであった。


今日はキロも、みんなと楽しめるといいのだが……。


その時である、


んんっ! ――なんだ?


今一瞬、妙な気配を感じたが……。


あ、消えた?


「ゲン様、どうかなさいましたか?」


「あ、いや、何でもない。今日は俺のことは気にしなくていいぞ。キロも存分に楽しんでくれ」


「いえ、そういう訳にはまいりません。兄に叱られてしまいます」


「う~ん、相変わらず固いなぁ。パーク内に入ったらシロを呼ぶから、そう四六時中くっついてなくても大丈夫だぞ」






そして、いよいよ開園である。


並んでいた人達が順番にパーク内へなだれ込んでいく。


ワールドバザールを抜けた俺たちは、一気にシンデレラ城前の大きな広場まで進んだ。


紗月や楓たちは一斉にスマホを取り出すと、チケットパスを見ながらポチポチやりはじめた。


スタンバイパスと言うそうだ。


昔はファストパスといって最初の1時間程で次々とパスを取ってまわったものだが、今は一部のアトラクションがスマホで予約できるそうだ。


俺のチケットも紗月から奪われ、次々に登録されていく。


そこには俺の好みや意見というものは、まったく加味されないようである。


「ミッキーだ! あれミッキーだね!」


そんな紗月の横でメアリーが騒いでいる。


【隠れミッキー】でも見つけたのかもしれない。


剛志さんも俺と同じ状態じょうたいだな。横でチケットを持った楓がスマホを操作している。


久実さんの方はデジカメ片手にパチパチ写真を撮りまくっていた。


するとマリアベルが、シンデレラ城を見ていた俺の横にたって、


「シンデレラ城ね~。以前は凄いな! って感動していたんだけど、今はなんていうか……、ね~」


『ね~』とか言われてもわかんねーよ。


自分が住んでいる【クルーガー城】と比べているのだろうか?


まあ、こちらはおとぎ話に出てくるお城だよ。コレはコレで楽しめばいいんでねーの。


その後は、あっちこっちに連れまわされ、長い列に並ばされ。


暑さと人の多さで、もうへとへと。


クリスタルパレス・レストランで軽く昼食をとったあとは、しばらく休憩を取ることにした。


元気なみなさんは隣のワールドバザールへ行ってしまった。






俺はひとり中央広場の隅っこに移り、シロにこっそり干し肉をあげていた。


もちろんシロは光学迷彩を張っているので周りからは見えない。


(ん、シロどした?)


『うしろ、おにく、こども、ちいさい、なく、おいしい』


(後ろ? この木の後ろか?)


休んでいたベンチの後ろには芝生が広がっており、所々に木が植えられている。


俺は立ち上がると木の後ろをチラリと確認した。


あっ、ホントだ。


小さい女の子が木を背にして泣いていた。


年齢は4~5歳ぐらいかな。


ダッフィーのポシェットを肩から掛け、右手にはペロペロキャンディーを握りしめている。


(う~ん、これは放っとくわけにはいかないよな)


俺はその子に声を掛けることにした。


女の子の正面にまわり、膝を折って目線をあわせる。


……その子は日本人ではなかった。


涙に濡れた翠色の双眸が俺を見つめる。


「こんにちはー。どうして泣いてるの? 大丈夫?」


恐がらせないように、笑顔でやさしく尋ねてみた。


すると、女の子はしゃくり泣きしながらも俺をみて、


「カイロの人なの? カマルの言うことがわかるの?」


「俺はゲン。カイロの人間じゃないけど言葉はわかるぞ」


「ほんとに! お話ししてもみんな変な顔するの」


カイロということはエジプト人なのかな。


アラビア語で話されても、わかる者はほとんどいないだろう。


この炎天下で泣いていたのだから、当然、喉が渇いているよな。


ちょうど正面にボートとパラソルが見えている。ディンギードリンクだ。


販売員のおねーさんからミネラルウオーターとオレンジジュースを購入する。


膝を折りカマルにオレンジジュースを渡すと、代わりにペロペロキャンディーを差し出してくる。


(はいはーい、キャンディーはちゃんと預かりますよ~)


キャップを開けてやると、ペットボトルを両手で持ってゴクゴク音を立てて飲んでいる。


半分ぐらい飲んで満足したのか、ペットボトルを俺に差し出してきた。


(はいはーい、キャンディーと交換しますね~)


ペロペロキャンディーを渡してやると、ニッコリ笑ってコクコクと頷いている。――可愛い!






さ~て、どこに送って行けばいいのかねぇ。


「カマル、今日は誰と来たの?」


「おねーちゃん」


「そっかー、おねーちゃんか。カマルはどっちから来たかわかるか?」


「うーんとね、あっちー」


小さな指でシンデレラ城を指差している。


「そうか、あっちか~」


俺はそう答えながら、隣にいるシロに念話で指示を出した。


(この子の匂いを辿って、おねーさんを見つけてきてくれ)


もちろんシロの姿は誰にも見えていない。


その間に俺はスマホを取り出し紗月に連絡を入れると、みんなとどこで落ちあうかを決めた。


シロは3分も経たずに戻ってきた。どうやら探し人は見つかったようである。


「さあ、おねーちゃんは見つかったぞ。今から会いに行くからなぁ」


カマルを腕抱きにすると、シロの案内でおねーちゃんの元へと向かった。


俺が西洋人の顔をしている為か。こうしてカマルを抱えていても、まわりに違和感は与えていないよういだ。


え~と、紺のヒジャブをまとう女性。紺のヒジャブ……と。


(ヒジャブ:イスラム系の女性が頭と顔をおおう布)


――いた!


「カマル、あの人じゃないか?」


「あ、ホントだ! アキーラおねーちゃんだ!」


俺はカマルを抱いたまま、紺のヒジャブを被った女性に後ろから声をかけた。


「すいません。カマルのおねーさんですか?」


すると、その女性はピクッと肩を跳ねさせ、こちらを振り向いた。


「カマル! どこ行ってたの? ずっと探してたんだから!」


カマルをお姉さんへ引き渡した。


「出会えて良かったですね。小さい子は手をはなしちゃダメですよ」


俺はそう言って踵を返そうとしたのだが、


――ひしっ!


カマルである。


俺の足にコアラのようにしがみついている。


「行っちゃイヤ! 一緒が良い」


そう言って放してくれない……。







8月14日 (金曜日)

次の満月は8月28日

ダンジョン覚醒まで23日・83日

この作品はいかがでしたか?

49

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚