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サタナキアは両脇を締めて、両掌(てのひら)を持ち上げて首を竦(すく)めながら答える。
「ああ、勿論納得したぞ、合体したルキフェル状態では相変わらずの暴君だったが、分離してくれたこの二人、コユキと善悪の言葉は思いの外(ほか)、我にも分かり易かったからな! だが、世界の為とは言え、お二人が消えなければならない、この一点には甚(はなは)だ疑問が残る所ではあるがな…… さっきまでトシ子殿とリエ殿、リョウコ殿、レグバ達四柱に今回の重要性は飽きるほど聞かせてもらったのだ…… なあ、オルクスよ、ずうずうしい頼みだとは百も承知の上で、お前に頼みたい…… 我がこの二人のアートマンを引き継いだ後、お前と妹弟(きょうだい)に協力を頼みたいのだが、駄目だろうか? この二人の人間の望みを叶えたい、我はそう思うのだ! その為ならばどんな艱難辛苦(かんなんしんく)をも喜んで受け入れると約束しよう! どうだろうか?」
オルクスはコユキと善悪の顔を順に見回すのであった。
真剣な顔つきでゆっくりと頷く二人を見たオルクスは溜息を吐き、その後、サタナキアに向けて真っ直ぐな視線を向けて答えた。
「はぁー、そうだな…… そうなったら、力を取り戻すまでサタン、貴様を護ろう! だが覚えておけ! 魔神王と言う存在はな、配下や部下から何かを奪うような下賎(げせん)な存在ではない、決してな! 三センチも王国の剣(つるぎ)も同じだった…… 常に配下や部下、弟子や慕い集まる者に与え続けてきたのだ…… なんでもな…… お前は違った、私の真核(しんかく)を得て速さと強さを実感したお前は、配下の強者達、魔将と呼んだ者達から力を奪い続けて来たのだろう? その結果がこの体たらくだ…… いいか? 人から奪った力はお前を強くはしない、寧(むし)ろ弱めるだけだ、そうだっただろう? 私と弟、妹の協力を欲するならば真の強さを求めよっ! 真の強さとは奪う事ではない、与える事が始まりだと理解しなければならないのだ! 判るかサタン? どう、どうなのぉ!」
サタナキアは簡単に答えた、即答である。
「うん、判った」
あ? ああ、随分軽いね…… まあ、判ったんなら良かった良かった! そう思ってしまう私、観察者であった。
「まあまあ、あんまり難しい事はおいおいで良いんじゃないのでござらぬか? オルクス君ぅ?」
「そ、そ、ゆっくり教えてあげてよね、頼んだわよ? オルクス君」
「グスッ……」
「……」
天幕の外からイーチの乾いた声が届けられた。
「あの…… 皆様揃ったそうですがぁ…… 本当にやるんですかぁ? やめましょうよぉー! 善悪様ぁ、コユキ様ぁー」
コユキの声は緊張からだろうか? いつもより少しだけ大きかったのである。
「くどいわよイーチ! んじゃ行くわよぉ! 見事散ります国の、いいえ、地球の為ぇ! レッツゴーォォ!」
「おおぅ! 行けぇぇぃ!」
駆け付けて来た来賓や配下の悪魔は、当初想定していた数を大きく超えて十数万に及んでいた。
満員の観客がお行儀良く並んで座って見ているステージに飛び出したコユキと善悪、ついでにサタナキアを迎え入れたのは、ニブルヘイム最高幹部達が工夫の限りを尽くした演出である。
光り輝くニブルヘイムに明滅する闇は、ルキフゲ・ロフォカレと配下の闇属性の悪魔たちの技に他ならないだろう。
噴水以外からも巻き上がって空中に美しい幾何学模様を描いているのは間違いなくアガリアレプト配下の水精達の仕業であろう。
フルーレティも眷属を呼び集めてくれたのだろうか?
オーロラやダイヤモンドダスト、散り踊る火の粉の姿がステージにおどろおどろしい花を添えていた。
壇上に進んだコユキは善悪が促した掌(てのひら)を受けて、集った全てのアートマンに宣言をしたのである。
「皆さん、お集まり頂き有難うねぇ! いまからアタシと善悪! 二人合わせてルキフェルなんだけどねぇ! 死にますっ! さようならぁっ!」
『おおおぉぉぉ?』