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#憑依
成瀬りん
633
#家族
たつ
53
#日常
ももは
551
鷹野の身体は、赤熱を超えた。
まるで星の核のような眩い光を放ち、その脈動に合わせて空気が震える。
雲は真っ二つに裂け、稲妻が夜空を縦横に駆け巡った。
「ぐっ……!」
公太は苦悶の声を漏らしながらも、鷹野を抱えたままさらに上空へと飛び続ける。
灼獄の力とアークカプセルの力が融合し、黒い渦となって全身を包み込む。
その膨大なエネルギーが、二人の身体を雲のさらに上へと押し上げていった。
風が悲鳴を上げる。
雲を突き抜けた二人の姿は、ついに地上から見えなくなった。
地上では――
畑中、唯我、一祟が、ただ空を見上げていた。
もう声は届かない。
届くはずもない。
それでも叫ばずにはいられなかった。
「公太ァ!!」
「公太さん!!」
「戻ってこいッ!!」
三人の叫びは、白い雲の彼方へ消えていく。
その頃――雲上。
「いい加減に離れろォッ!!」
鷹野が凄まじい力で公太を吹き飛ばした。
「ぐぁっ……!」
次の瞬間。
鷹野の身体が真紅に輝く。
ついに限界を超えた。
「これで終わりだ……!!
地球ごと消え去れェェェッ!!」
轟音。
純粋な破壊エネルギーが解き放たれる。
世界そのものを砕くほどの光。
公太は空中で体勢を立て直す。
「うおおおおおおッ!!」
黒炎が逆巻く。
灼獄とアークカプセル。
二つの力を極限まで解放し、その光を真正面から受け止めた。
黒と赤。
二つの巨大な力が激突する。
空そのものが震え始めた。
しかし――。
上空でさらに圧縮された鷹野のエネルギーは、公太の力を少しずつ押し返していく。
「くっ……!」
押される。
このままでは、防ぎきれない。
その時だった。
遥か遠く。
廃墟の片隅。
一人のフード姿の人物が静かに空を見上げていた。
何も語らない。
ゆっくりと右手を掲げる。
掌に集まる紫色の光。
雷でもない。
炎でもない。
まるで魂そのものを凝縮したような、不思議な光だった。
次の瞬間。
紫の光線が夜空を一直線に駆け抜ける。
黒と赤が激突する中心へ。
轟音が止まった。
一瞬だけ、世界が静止する。
押されていた公太の力が、わずかに押し返す。
「……何だ……?」
鷹野が目を見開く。
公太も驚き、その光を見つめた。
だが正体を確かめる前に、
フードの人物は静かに背を向け、廃墟の奥へ姿を消した。
紫の残光だけが夜空に揺れていた。
直後。
世界を揺るがす爆発が起きた。
雲上で炸裂した轟音は、関東全域へ響き渡る。
突風が街を吹き抜け、
ビルの窓が震え、
街路樹が大きく揺れた。
人々は空を見上げ、息を呑む。
地上。
畑中たちも衝撃に耐えながら空を見つめていた。
「……公太!!」
畑中が叫ぶ。
一祟はその場に崩れ落ちた。
「公太さん……!!
公太さんッ!!」
唯我も拳を強く握る。
「……まさか……」
誰もが思った。
終わった、と。
畑中は力なく空へ手を伸ばく。
「……公太……」
その時だった。
ふわり、と暖かな風が吹く。
どこか懐かしい気配。
畑中がゆっくり振り返る。
そこには――
夕陽を背に歩いてくる一人の男がいた。
ボロボロの服。
血に染まった身体。
傷だらけの腕。
それでも、その肩には気を失った鷹野を担いでいる。
間違いない。
公太だった。
「公太さん!!」
一祟が真っ先に駆け寄る。
涙を流しながら、公太へ飛びついた。
唯我も静かに歩み寄る。
畑中は言葉を失い、ただ見つめていた。
「……生きてたんだな。」
その一言に、公太は小さく笑う。
「ああ。」
無線からジュリーの涙声が響く。
『公太……。
本当に……よかった……。』
一祟が鷹野を地面へ降ろす。
唯我が公太を見る。
「……どうやって生き残った?」
公太は静かに息を整えた。
「灼獄とアークカプセルの力を合わせて……
爆発をできる限り吸収した。」
二人は絶句する。
唯我の視線が倒れた鷹野へ向く。
「……まだ生きている。」
一祟も怒りを滲ませる。
「今ここで終わらせましょう。」
歩き出そうとした、その時。
「待ってくれ。」
公太が静かに言った。
全員が足を止める。
「なぜだ、公太?」
唯我が問いかける。
公太はゆっくり首を振った。
「こいつのしたことは許せない。」
「でも……
誰からも信じてもらえなかったんだ。」
「俺もORVASに来てなかったら……
きっと同じだった。」
「喧嘩ばかりして……
人に迷惑をかけて……
何となく生きていたと思う。」
「だけど、お前たちと出会って変われた。」
「仲間のために戦うことを教えてもらった。」
「鷹野には、それがなかった。」
「だから……
気持ちが分かるんだ。」
公太は鷹野の前まで歩く。
そして――
深く頭を下げた。
「お願いだ。」
「もう一度……
やり直すチャンスをあげてほしい。」
唯我と一祟は目を見開く。
誰よりも喧嘩ばかりしていた公太。
誰にも頭を下げなかった公太。
その公太が、
誰かのために頭を下げていた。
畑中は静かに二人の肩へ手を置く。
「……公太を信じよう。」
「俺たちORVASは……
人を救う組織だからな。」
やがて隊員たちが到着し、
鷹野は拘束され、搬送されていく。
公太たちも治療のため車へ向かった。
唯我と一祟が先に乗り込む。
公太も続こうとした、その時。
「……公太。」
畑中が声をかける。
「本当によくやった。」
公太は少しだけ笑う。
「……ああ。」
車のドアが閉まる。
走り出す車内。
窓の外を眺めながら、公太は心の中で呟いた。
(あの時の紫の光……。)
(あれはいったい……。)
新たな謎だけを残し――
長き戦いは、静かに幕を閉じた。
コメント
1件
いやあ、もう胸が熱くなりました……! あれだけ誰にも頭を下げなかった公太が、鷹野のために「やり直すチャンスを」と頭を下げるシーン、本当にぐっときました。畑中たちが「公太を信じよう」と応じるのも、このチームの絆を感じられて泣けます。最後の紫の光の謎も気になりますね。次回が待ち遠しいです!