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ORVAS本部・地下特殊牢獄。
幾重もの合金扉に守られた最深部。
光も音も届かない静寂の中、簡易ベッドには鷹野修司が眠っていた。
その姿は、かつて世界を滅ぼそうとした男とは思えないほど静かだった。
監視室のモニターを見つめながら、畑中が低く問いかける。
「状況は?」
隊員がすぐに報告する。
「アビスの力は完全に消失しています。
現在は衰弱状態で、記憶にも大きな欠損が確認されています。
完全に回復するには、相当な時間が必要かと」
畑中は腕を組み、鷹野を見つめた。
「……いつ目を覚ますか分からん。
警戒だけは絶対に緩めるな」
「了解!」
畑中は静かに踵を返した。
ブリーフィングルーム。
公太、唯我、一祟の三人が待っていた。
畑中は短く告げる。
「鷹野は拘束した。
アビスの力は失われ、記憶も曖昧だ。
少なくとも、すぐに脅威になることはない」
張り詰めていた空気が、少しだけ和らぐ。
一祟が小さく息をつく。
「……これで、本当に終わったんですね」
「ああ」
唯我も静かに頷いた。
公太だけは腕を組みながら苦笑する。
「……まだ実感ねぇな」
畑中は三人を見渡した。
「アビスとの戦争は終わった。
だからこそ、お前たちをここへ集めた理由も終わった」
少し間を置き、続ける。
「これから先、ORVASに残るかどうかは、お前たち自身で決めろ」
静寂が流れる。
最初に前へ出たのは、公太だった。
「俺は残る」
畑中は黙って見つめる。
「守りたいものができた。
それに……もっと強くなりたい。
もっと強い奴と戦えるようになりたい。
だから、ORVASに残る」
唯我も一歩前へ。
「俺もだ」
一祟も力強く頷く。
「僕も残ります」
畑中は満足そうに息を吐いた。
その瞬間、公太がニヤリと笑う。
「……それと、忘れてねぇよな?」
「?」
「最後は、お前を倒すって約束」
部屋が静まり返る。
そして畑中は小さく笑った。
「……そうか」
少しだけ口元を上げる。
「覚悟しとけ。
これからの方が、ずっと厳しいぞ」
「望むところだ」
公太も笑った。
ジュリーはその様子を見つめ、優しく微笑む。
三人が部屋を出た後。
ブリーフィングルームには畑中とジュリーだけが残っていた。
「……あの子たち、本当に成長したわね」
ジュリーが静かに呟く。
「最初は問題児ばかりだったのに」
畑中は天井を見上げる。
「ああ。
俺の想像以上だった」
そして静かに笑う。
「ORVASはもっと強くなる。
あいつらがいる限りな」
夕暮れ。
オレンジ色に染まる街。
三人は並んで歩いていた。
「……なぁ」
公太が空を見上げる。
「本当に終わったのかな」
唯我は静かに答える。
「少なくとも今はな」
一祟も頷く。
「でも……
また何かが始まる気がします」
三人は夕日に向かって立ち止まる。
公太は拳を握った。
「だからこそだ。
もっと強くなる」
「ああ」
「はい」
三人は笑い合い、それぞれの帰る道へ歩き出した。
数日後。
一祟
寺には子どもたちの元気な声が響いていた。
「そう、その調子ですよ」
一祟は優しく子どもたちへ少林寺拳法を教えていた。
その中には妹・琴音の姿もある。
「お兄ちゃん!」
「見て!」
「うん。
すごく上達したね」
住職は静かに微笑んだ。
「人は守るものができた時、本当の強さを手に入れる」
その言葉に、一祟は静かに頷いた。
唯我
森の奥。
静寂の中で、唯我は龍焉刀を抜く。
一太刀。
また一太刀。
迷いのない剣筋が風を切る。
その姿を遠くから見つめる瞳。
(唯我……)
(いつか私も、あなたを支えられる存在になりたい)
風が木々を揺らした。
唯我は何も知らず、ただ剣を振り続ける。
公太
学校の屋上。
授業中にもかかわらず、公太は寝転がって空を眺めていた。
流れていく雲。
「……これからどんな強い奴が出てくるんだろうな」
自然と笑みが浮かぶ。
「ワクワクするじゃねぇか」
拳を握る。
(見てろよ……
一祟。
唯我。
そして畑中)
(俺はもっと強くなる)
その時だった。
キーンコーンカーンコーン――
授業開始のチャイムが鳴り響く。
直後。
「武藤ォーーッ!!
また屋上でサボってるな!!
授業始まってるぞー!!」
担任・鈴木の怒鳴り声が響く。
公太は苦笑しながら立ち上がる。
「へいへい、今行くって!」
笑いながら屋上を駆け出す。
その背中には、もう迷いはなかった。
戦いは終わった。
しかし――
物語は、まだ終わらない。
それぞれが歩み始めた新たな未来。
その先で、再び世界を揺るがす”影”が静かに動き始めていた――。
『シャドウ・ブレイカー』 第一部・完
――第二部へ続く。
コメント
1件
お疲れ様です、たけっちさん。第一部完結おめでとうございます! 鷹野の拘束で一区切りつきつつ、三人それぞれの新しい日常が描かれていて、じんわりと温かい気持ちになりました。特に公太の「最後はお前を倒す」って畑中への約束、まだ覚えてたんだ…って胸が熱くなりました。あと、ラストの“影”の気配、めっちゃ気になります。第二部、静かに待ってますね🌙🤍
#憑依
成瀬りん
633
#家族
たつ
53
#日常
ももは
551