テラーノベル
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「……う、ん…」
重い瞼を押し上げると、視界がぐらりと揺れた。
昨日の今日で、気が張っていたのだろう。
自宅に戻った瞬間に猛烈な寒気と眩暈に襲われ、そのまま倒れるように眠ってしまったらしい。
「あ、凛さん……起きました?」
枕元から聞こえてきた、低くて穏やかな声。
視線を向けると、そこにはエプロンをつけた瞬くんが、心配そうに私を覗き込んでいた。
「瞬、くん…?どうして、ここに……」
「無理に動かないでください、凛さん疲れてたのか、廊下で俺にだきついたまま気失っちゃったんですよ」
「えっ……?!ほ、本当に?ごめん、私ったら……っ」
彼は私の額にそっと手を当てた。
大きな、少しひんやりとした手のひらが、熱を持った肌に心地いい。
「……全然いいですけど、結構ありますね、熱。」
情けなくて涙が滲む私を、彼は叱るような、でもたまらなく愛おしそうな目で見つめた。
「ごめんなさいね、迷惑かけて」
彼はサイドテーブルに置いてあったボウルから
タオルを絞ると、手際よく私の首筋や手首を拭き始める。
「謝るんじゃなくて、頼ってください。……凛さん。弱っているときくらい全部俺に委ねてください」
「でも、悪いわよ…あなたも仕事、あるのに……」
「有給、使いました。……今は仕事よりも、凛さんを元気にすることの方が、一億倍大事ですから」
そう言うと
彼は「はい、あーんして」と、丁寧に裏ごしされたお粥をスプーンで口元まで運んでくる。
熱のせいで思考がとろけている私は、抵抗することもできず、雛鳥のように口を開けた。
「……おいしい」
「良かった…食べ終わったら、これ飲んで寝ましょう。……凛さんが眠るまで、ずっと手、握ってますから」
食後、彼は予告通り私の手を自分の両手で包み込み
指先を優しくマッサージするように撫でてくれた。
そのあまりの献身さと、彼のシトラスの香りに包まれて、私の頑固な自立心は音を立てて崩れていく。
「……瞬、くん。…行かないで」
「どこにも行きませんよ。……ずっと、ここにいます」
彼は私の額に、誓うような優しいキスを落とした。
私は彼のぬくもりに溺れながら、深い、幸せな眠りへと落ちていった。
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おまる