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オスカーと名乗った彼はその日から、彼は時々私の元に来るようになりました。
最初は、雨宿りの場所を貸してくれたお礼として、彼の母親が作ったというパイを持って現れました。
私は、もうずいぶん長い間食事をしておりませんでしたから、何かを食べたいという欲もすっかり無くなっていたはずでした。
ですが、そのパイの香りを嗅いだ時、急にそれを食べてみたいと思い、手を伸ばしてしまいました。
「美味しい……」
私は自然とこの言葉を呟いており、オスカーはそんな私の様子を見て
「良かった。母のパイは絶品なんですよ」
と太陽のような笑みを浮かべて言いました。
やはり、その微笑み方もオリバーに瓜二つ。
私は彼の姿を見る度に、かつてオリバーと共にいたときと同じような……頬が熱くなり、心臓が高鳴る感覚を思い出しました。
その日は、二人で彼のお母様が作ったパイを食べるだけで終わりました。
それから、彼が何故か大工道具を持って現れたこともありました。
私に体力や能力がないから、この家を修理できないと彼が思ったのでしょう。
私が
「そんなことはなさらないでください」
と、オスカーにお願いしました。ですが彼は言いました。
「あなたのような美しい方に、この家は相応しくない」
と。
こうして、彼は大工道具を持って毎日私のところまで訪れ……内装を整えるだけでなく、使えなくなったキッチンまですっかり綺麗にしてくれました。
そして、これは偶然なのでしょうか。
オリバー、そしてシャリーと暮らした、あの私が作り上げた大切で、温かな空間とそっくりに作り上げられていたのです。
私はまた、泣いてしまいました。
「どうしましたか?気に入りませんでしたか?」
「違います……そうではないのです……」
「では、どうしてあなたは、僕に笑顔を見せてくれないのですか?」
「……え?」
「僕は、あなたの笑顔が見たくて、こんなことをしてしまっているんです」
オスカーの言葉は、私にとって予想外でした。
何故こんなにも、私なんかのことを気にかけるのかと思っていましたが……。
オスカーは、私の手を急に掴んできました。
力強く、力仕事をしているとはっきりわかるほど、ゴツゴツした手だと感じました。
「初めて見た時から、あなたのことばかり考えてしまうんです」
「そんな……」
「あなたが好きです。好きなんです」
私は、どう答えるべきか悩みました。
男性から、このような熱い思いを打ち明けられたのは、オリバー以来でした。
そして目の前にいる男性は、オリバーとよく似た男性。
でも、きっとオリバーとは違う人。
真摯に気持ちをぶつけてくれるこの男性に、私はオリバーを重ねて、オリバーを想ってしまいながら受け入れることは、とても失礼なことのように思いました。
「……ごめんなさい……気持ちは嬉しいけど……」
「どうしてですか!」
「私は……あなたに夫を重ねてしまう……」
「どういうことですか?」
「あなたは、私の夫にとてもよく似ているんです」