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それから、私は話しました。
オリバーをどんなに愛していたかを。
そしてオリバーとの間に生まれた娘をどれだけ愛していたかを。
そんな娘を置いて、自分は隠れなくてはいけない理由があることを。
そして、オスカーを見た時に、オリバーのようだと思ってしまったことを。
一通り話し終えてから、私は改めて言いました。
「あなたの気持ちは……とても嬉しい。でも、私にはあなたの気持ちを受け取る資格はないのです。家を建て直してくれたことには感謝をしますが、お願いです……もうここにはこないでください」
すると彼は、急に私のことを抱き締めてきました。
強く。
「そんなことで、僕の気持ちを拒絶しないでください」
「え?」
「僕は、今目の前にいるあなたが好きです。あなたの役に立ちたい。それだけしか考えていません。そしてできるなら……」
オスカーは、私の体をそっと離しながら
「あなたの唇にキスをしたい。あなたを抱きたい。あなたの笑顔を見たい。そんな欲望と戦っている男なのですから」
「そんな……」
まさか、ここで直接的に性的な関係になりたいと告げられると思っておりませんでした。
そのイメージを一瞬頭の中で思い描いてしまった私は、かつて1度だけオリバーと繋がったあの場所がかっと熱くなるのを感じてしまい、それがとても恥ずかしくなりました。
「そんなこと……言わないでください」
「……そうですね……女性に対して失礼でしたね……。でもこれが、僕の正直な気持ちなのです」
オスカーは、ふっとここで、寂しそうに顔を俯きました。
「でも、あなたにとって僕は……名前を教えてくれない程の存在なんですか?」
「あ……」
そうでした。
私は、長い間人と接することがなかったので、誰かに自分を名乗るということをすっかり忘れておりました。
「すみません、失礼なことを言って……。今日は……帰ります……」
そう言って立ち去ろうとするオスカーを引き止めるかのように、私は言ってしまいました。
「シャルロット……」
「え?」
「私は、シャルロットよ……。オスカー」
「シャルロット……僕に君の名前を呼ぶことを許してくれるの?」
「ええ。呼んで、あなたに呼ばれたいわ」
オリバーの声に似ているからこそ、その名前をオスカーに呼ばれることは、嬉しいような、申し訳ないような気持ちが私の中に広がっていきました。
それでも、たった1つ……名前を教えただけで喜んでくれるオスカーがとても可愛く思えました。
だからでしょうか……。
久しぶりに、自然と笑みが溢れました。
そしてそんな私の表情を見たオスカーは、また私を強く抱きしめました。
幸せな時だと、思いました。
彼となら、私が失った幸せな時を、もう1回手にすることができるかも、と期待をしてしまいました。
ですが……オスカーに名乗った時から、もう私の次の運命は決まってしまっていたのです。
この森から出ていかなくてはいけないという運命。
彼とは2度と会うことは許されないだろうという……宿命。