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とりあえず今夜の時間がつぶせることに関しては、救われた気分だった。ただ、フェスティバに奈々以外の人が乗るのは初めてのことだ。健太は信号で車が止まるたびに、助手席を向いた。
そこにいるのは、確かに奈々ではなかった。彼女はもう少し背が低くて、もう少しぽっちゃりしてて、肌はもう少し焼けてて、縞模様のセーターに赤いコートが似合う。
「どうしたの?」マチコは小さく首を傾げながら、目をぱちくりさせている。
「いや、別に」と健太は言った「マッチャンはすらっとしてて、色白で、黒が似合うんだね」
「いまさら改まって、何言うのよ」
後部座席のミンが身を乗り出した。
「ちゃんと前向いた方がいいよ」
直後に、後ろの車のクラクションが鳴った。信号は知らぬうちに青になっていた。