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「今日はヴェ◯サイユ宮殿に行きたいなっ!」

プロポーズの翌朝。

ホテルの部屋で朝食を頂いていると、聖奈が今日の望みを伝えてきた。

「ああ。いいな。昨日伝えたように今日の予定は未定だからかまわないぞ」

「聖くんのお任せタイムは一日かぁ…」

仕方ないだろっ!!普段やらないんだからっ!!

「…俺にとっての戦いはディ◯ニーまでだったからな」

「聖くんにとってはプロポーズは戦いなのね…」

ある意味聖戦だからなっ!

相手が相手だからすぐに無条件降伏しそうだけど……

俺達は心ゆくまで婚約旅行を楽しんだ。

旅行の詳細は伏せる。だってこれはバトルモノなんだならなっ!






例の旅行から帰ってきて、五日が経った。

「何か忘れてる気がするんだよなぁ…」

「聖くん…まだ早いよ…」

いや、認知症ちゃうわ!

会社で俺の呟きが聞こえたのか、聖奈さんがボケてきた。

いやこの場合リアルにボケてきたのは俺か……

「何を忘れたの?」

「それがわからんから忘れているんだろ…」

ボケにボケを重ねるなよ……

プルルルルップルルルルッ

「ん?誰だ?…姉貴だ…あっ!!」

「出ないの?お姉さんなんでしょ?」

思い出した…まだこの電話に出る訳にはいかない…出なきゃ出ないで後が怖いけど……

「聖奈。実は、頼みがある…」



俺は聖奈に姉貴から頼まれていた顔合わせの挨拶の件を伝えた。



「そっかぁ。じゃあちゃんと挨拶しなきゃね!」

聖奈は俺の両親にしか会っていないからそんな風に思えるんだ……

あれは悪魔だぞ…?

「電話は嫌だからメッセージを送っといたよ。どうせ明日来いとか『ピロンッ』…今日かよ…」

「凄いお姉さんだね…私、嫌われないかな?」

姉貴からは秒速で返事が来た。

家族以外の相手もいるのに当日来いとか、普通の神経で言えるか?

「…少なくとも俺に対してよりはマシだから」

「…それ、何の慰めにもならなくないかな?」

流石に聖奈個人にいきなり来いとは言ってこないだろう。

嫌うとかそんなことはわからん。

むしろ姉貴に好きな奴とかいるのか甚だ疑問だ。

「とりあえず、今日の夜に都内で会うから店を予約しなきゃな…」

「それは任せておいて。19時に予約しておくからお姉さんにそう伝えといてね」

「頼む」

俺が店を選んでも文句しか言わないからな…聖奈が選んだと知れば、流石に文句は言わんだろう。

婚約を確信して、浮かれていた気持ちが急激に冷めてしまった。

そのまま憂鬱な気持ちで夕方まで過ごした。






「聖。待たせたわね」

うん。19時って言ったよね?!なんで1時間も遅刻してんだよ!!

「初めまして。長濱聖奈と申します。今回の婚約はお姉様のお力添えも多分にあったと聖さんから伺っております。

ご挨拶が遅れたことに対しての謝罪と、先程のお話についての感謝を、ここでお伝えすることをお許しください」

「………貴女…聖のどこが良かったの?こんなしょうもない男ではなく、貴女なら大抵の男を捕まえられたのじゃないかしら?」

「おいっ!初対面で失礼だろ!!」

初対面じゃなくても失礼だし、そもそも俺に失礼だろっ!!

これでも国王だぞっ!!知る人ぞ知る……

「聖。黙ってなさい。私は彼女に聞いているのよ」

「いや、婚約者だぞ!?黙っているはずがないだろ!」

ここは老舗の料亭だが、こういった店には離れに個室がある場合が多い。

ここはその離れなので大声は問題ない。

いい客とは言えないが……

「聖くんいいの。お姉さんの心配もわかるから」

「あら?貴女は自分が聖と不釣り合いだと認めるのね?聖。聞いたかしら?貴方は軽く見られているわよ?」

小学生の揚げ足取りかよ……

「姉貴…多分、聖奈の言っている意味は逆だぞ?」

「は?貴方、こんなに美人で礼儀作法がちゃんとしていて頭も良さそうなお嬢様が、ただ偶々運良く成功しているだけが取り柄の自分に溺れているなんて、本気で思っているの?」

言い方ぁあ!!!!

一応アンタの血の繋がった弟だぞ!?

「お姉さん。聖くんの言う通りです。今も私の方が好きだと断言できますし、好きになったのも私からです。それに好きなだけじゃなく、未来も考えられる相手は聖くんをおいて他には誰もいません」

「……貴女、賢そうだと思ったけど、とんだ馬鹿だったようね」

ガシャンッ

「いい加減にしろ!!いくら実の姉でも許さんぞっ!」

いい加減にしないと、ミランに暗殺を頼むぞっ!!

俺がしろって?

怖くてできるわけないだろっ!!

「聖くんは黙ってて!!

お姉さん。私は馬鹿かも知れませんが人を見る目はあります。

断言しましょう。聖くんは世界一の旦那様になります。必ず私を幸せにしてくれると確信しています。

もちろんすでに沢山の幸せを貰いすぎているので、いつ死んでも後悔しませんが」

「…聖奈。ありがとう」

聖奈は怒っている。

自分のことではなく、俺のことで。

「…いい」

「「?」」

「いいわ!貴女!!」ガシッ

「えっ!?」「お、お姉さん!?」

聖奈の怒りの言葉に姉貴が俯いていたと思えば、急に立ち上がり聖奈を抱きしめた。

「やったわね!聖!でかしたわっ!!」

「な、何がだよ?」

「聖奈のことに決まっているでしょ?これだから馬鹿聖は……

あっ。私は義姉だから聖奈って呼ぶわよ?

聖奈にはお姉ちゃんと呼んで欲しいわ」

「お、お姉ちゃん?」

あの・・聖奈がドン引きしている……

ミランとエリーの気持ちがわかったことだろうが、今はそんな事を考えている時ではない。

俺が知っている姉は、自分に厳しく他人にはその10倍は厳しい人だ。

ただ対外的に他の人からは、俺にだけ甘いように見せてきたが……

「ああ…夢にまで見た理想の妹が手に入ったわ…聖奈。こんな男は捨てて私と暮らしましょう?」

「お、お姉ちゃん?あの…聖くんが私にとっては一番なので…」

「くぅ…あの聖に奪われるのは、自分が自分で情け無いと思うけど…人のモノだと思うと尚更聖奈が輝いて見える…」

…俺の知っている姉ではない。

誰だこいつ?

ホントの姉貴を返……さなくてもいいや。

「……」

「本当に美人ね…あっ。さっき言ったことは嘘よ。貴女は賢くて可愛らしい女の子よ。でも、聖に勿体ないと言ったのはホントよ?」

「あ、ありがとうございます?」

「それからその堅苦しい言葉はやめなさい。もっとこう…『お姉ちゃん!あのお洋服買って?』みたいな……おっと。想像しただけで鼻血が」

誰なんだ、この恥ずかしい生き物は?

「…じゃあ結婚を認めるってことでいいな?」

何で姉に許可がいるのかわからんけど。

そんなことを言えばめんどくさいから言わんが…帰りたい……

「当たり前よ。もし聖奈を泣かせたら私が聖を殺しに行くから、肝に銘じておきなさい」

「いや、アンタ聖奈のなんなんだよ?」

ヤベッ。普通につっこんでしまった。

「お姉ちゃんよっ!!」

「はぁ…そろそろ離してやってくれ。聖奈が固まっているぞ?」

「あら?ごめんなさい。それで?結婚式はいつ挙げるのよ?」

「まだ決まって『聖には聞いていないわ』…はい」

やっぱ、帰っていいかな?

その後は聖奈が質問攻めにされ、俺は一人酒を飲んでいた。




「じゃあまたね」

漸く解放された……

俺にとってはお漏らし事件の話題が出なかったから無事終えたと思おう。

「うん。お姉ちゃん、気をつけてね」

聖奈も諦めてこの対応だ。

俺達はゲンナリしながらマンションへと帰ったのだった。





「凄い人だったね…まるで嵐だよ…」

マンションへ着いた俺達は、異世界へ行く元気もなくなり、今日はゆっくりすることにした。

「俺も意外だったよ。あの姉貴に気にいる人が出来るなんてな」

「まぁ、終わりよければ全て良しだね!」

「聖奈のそのポジティブさは見習わんとな…」

俺なら良しとは微塵も思えん。

この後もアイツが死ぬまで親戚になるのかよと、嘆いているだろう。

「今日はゆっくり休んで、明日からまた頑張ろうね!」

「そだね」

聖奈の方が被害者(?)なのに、俺の方が何もやる気が起きなかった。






「聖奈!お姉ちゃんが来たわよ!」

翌日、いつも通り会社で業務をこなしていると、呼んでもいないのに姉貴がきた。

「お、お姉ちゃん…どうしたの?」

凄い…動揺は一瞬だったな…俺なら胃が痛くなってその場で倒れていたぞ。

「聖奈に似合いそうなお洋服を見つけたから買って来たのよ。どうこれ?…あら!やっぱり似合うじゃない!」

姉貴は袋から服を取り出すと、聖奈に当てて一人喜んでいる。

「お姉ちゃん!これハイブランドじゃない!?ダメだよ!こんなに高価なものは受け取れないよ!」

「いいのよ。可愛い義妹の為なら安い買い物よ。それに貴女の婚約祝いをまだしていないから、いいわよね?」

あのー。実の弟の俺が貰うべきでは?

借りが出来るからいらんけど……

聖奈から後で聞いたら、あの服は30万もするらしい……




「やっと帰ったな…ここは一応仕事場なんだけどな…」

「うん…でも、あの感じだとまた来そうだね」

「嫌なこと言うなよ…出社拒否するぞ…」

聖奈の予想は今まで外れたことがない。

それからというもの、姉貴は理由を作っては会社へと押し掛けてきた。

子供の時はあれだけ俺ばかり構ってきていたが、聖奈の尊い犠牲により俺は無視されている。


ありがとう。君はいい奥さんになれるよ。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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