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夕飯はパンと、鶏らしい肉類がメインで出された。
食事はスパイスが少なめで薄味な気がするものの、概ね美味しく食べられる。
ヤモリの姿焼きとか蛇のスープとか出てこなくてよかった。
夜中に召喚されたので、とにかく眠くて。
食べ終わってすぐに、勇人(ゆうと)と一緒にシャワーを浴びてさっさと寝てしまった。
もちろん勇人も一緒。
何か確認でもしていたのか、哲人(てつひと)は、かなり後から寝にきた気がする。
少し短いけれどもぐっすり眠って、朝がきた。
まだ早朝らしい時間だけど、体感ではたっぷり寝たと感じる。
哲人と勇人はまだ寝ているから、そっと起きだした。
着替えて、トイレに併設されていた洗面所で顔を洗い、髪を整えてリビングへ。
ちょっと喉が渇いたので、お茶でも淹れようと思ったのだ。
すると、夕飯の食器が下げられていた。
気づかなかったけど、昨日のうちに下げてくれたのかな。
至れり尽くせりで、勇人を産んでから久々に家事をせずにゆっくり過ごせている。
これだけはありがたい。
でも、ここで甘えていたら飼い殺しになりそう。
窓から外を見ながらお茶を飲んでいると、廊下側の扉が開いて、リネさんじゃないメイドさんが入ってきた。
カートのようなものの上には、朝食らしいパンや果物が並んでいる。
「おはようございます」
声をかけると、驚かれた。
「お、おはようございます!こちら、朝食でございます。準備いたしますので、少々お待ちください」
「いえ、私が早く起きてしまっただけなので、急がなくていいですよ」
リネさんよりも、所作が見慣れた感じというか、親近感が持てる。
というより、リネさんの動作が洗練されてるのか。
リネさんのスペックがここの使用人さんの標準なのかと思っていたけど、もしかしたら違うのかな。
聞いてみると、今朝来てくれたメイドさんはサンナさんといって、平民出身らしい。
そして、リネさんは貴族の出身なんだとか。
リネさんはまとめ役兼教育係で、サンナさんたちは実働隊のようなもの。
ということは、本来ならマネージングする立場の人が私たちに付いてくれていたのか。
丁重にもてなされてるのかと思ってたら、担当がサンナさんに変わったらしい。
リネさん、なんか態度おかしかったもんね。
嫌になって変えてもらったか、見とがめられて配置換え、とかかな?
「じゃあ、サンナさんは北の領地からここへ来たんですね」
「ええ、優秀生として王都の学院を卒業できたので、なんとか王城のメイドになれたんです」
「すごいんですね」
「そんなことないですよ!同期の男性なんかは、官僚としてもっとがんばって活躍していますし。私なんかは雑用係ですから」
「それこそ謙遜ですよー。国の中枢で働けるっていうのはすごいことです」
公務員ってすごいと思うよ。選び抜かれたわけだし。
「そう言ってもらえると、ちょっと自信になりそうです」
「うんうん、自信持つべきですよ」
サンナさんは、現在20歳の結婚適齢期ぎりぎり端っこだそうだ。
ちょっと早めだけど、こちらでは70歳まで生きれば大往生らしいから、そんなもんなんだろう。
北の領地は伯爵領で、領地を持つ貴族の扱いとしては大名に近く、ある程度自治が認められているらしい。
国王の下に続く貴族は、上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵と身分が下がり、庶民には身分はないとか。
貴族は与えられた土地を治め、税金を集めて国に納付する。
国に税金を納めるのと、内情報告のために、年に一回、だいたい家族同伴で1ヶ月~半年ほど王都に来るんだそうだ。
それ何て参勤交代。
貴族が王都に集まる時期は、社交シーズンになる。
もう少しでそのシーズンらしく、貴族がそろそろ王都に集まってきているらしい。
めんどくさそうだな。
さっさと情報を集めて旅に出るのが正解かも。
貴族は、基本的には直系の男性が後を継ぐらしいが、女性が継ぐこともなくはない。
現に、北の領地を治めているのは素晴らしい女伯爵だとサンナさんが自慢していた。
貴族の女性は、ほとんどが別の貴族へ嫁にいくらしいので、若干男尊女卑の気があるのかな。
そして、次男以降の男性は、婿入りするか、騎士や事務官などになるか、それが無理なら庶民になるそうだ。
結構シビア。
国王は、王都を治めて貴族をまとめ上げ、諸外国との外交を担当、法律の制定と発布、軍の指揮など過剰に仕事をしているようだ。
大変だなぁ(ひとごと)。
また、役人は貴族とは別の身分制度らしく、国王に仕える人だけの呼び名らしい。
騎士も基本は庶民で、功績を上げれば身分と土地を与えられることがあるそうだ。
そして、テヌ・ホキムとは『人の国』を意味している。
つまりは、人間が治める人間の国。
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