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降伏を知らない白雪
「ーーーッ、全員下がれ!!! 逃げろ!!!」
司令塔である深澤(ジョーカー)の怒号が、ホテルの最上階に響き渡った。
普段の軽薄なトーンは微塵もない。阿部の構築した通信網から流れる深澤の声は、恐怖と焦燥に震えていた。
作戦は完璧だったはずだった。しかし、政界の大物を仕留めた瞬間、地下の拠点はハッキングされ、ホテルの全出口が物理的に完全封鎖された。
現れたのは、30人の私設兵ではない。
世界的な暗殺結社が放った、対・Snow Man用のアサシンーーコードネーム『黒百合』。
「ハッ、あははは! 面白いじゃん、お前!!」
高笑いを上げながら、佐久間(ブラスト)が宙を舞う。ククリナイフを両手に、人間離れしたアクロバットで敵の懐に飛び込むが、キィン!と甲高い金属音が響いた。敵の漆黒のブレードが、佐久間の刃を易々と受け止める。
「チッ、硬ぇ……!」
直後、敵の強烈な蹴りが佐久間の腹部を捉えた。壁に叩きつけられ、ピンク色の髪が血に染まる。
「佐久間くん!!」
ラウール(フェザー)が、長いリーチを活かして敵の首筋へワイヤーを伸ばすが、敵は振り返りもせず、そのワイヤーを素手で掴んで引き寄せた。圧倒的な怪力。ラウールは体勢を崩され、そのまま床に叩きつけられる。
「動くな、クソ野郎」
1キロ離れたビルから、渡辺(シアン)が引き金を引いた。放たれた弾丸は、確実に敵の眉間を捉えていた。しかしーー敵は、わずかに首を傾げただけで、超音速の弾丸を紙一重でかわしたのだ。
「嘘だろ……スナイパーの位置を予測してやがった……!」
冷汗が渡辺の頬を伝う。スコープ越しに見る敵の目が、渡辺のいるビルを真っ直ぐに見据えていた。
「翔太、位置を変えろ! 狙われてる!」
無線で叫びながら、岩本(エース)が前線に飛び出した。素手での一撃。コンクリートを粉砕する岩本の拳が、初めて「完全にガード」された。敵の防御の上からでも骨が軋む音がする。
「っ、ガキの頃から何百人と殺してきたが……お前みたいな化け物は初めてだ」
岩本が不敵に笑うが、その口元からは血が伝っていた。
敵の黒いブレードが、岩本の喉元へ迫る。
ーーその刃を、火花を散らしながら受け止めたのは、目黒(シャドウ)の短刀だった。
「岩本くん、下がって」
目黒の瞳から完全に感情が消えている。影のように敵の死角へ回り込み、流れるようなナイフ捌きで敵の肉を削ろうとするが、敵の速度はその上をいった。目黒の肩口から鮮血が噴き出す。
「めめ!! 照にぃ!!」
向井(カメラ)が閃光弾を放ち、一瞬の隙を作る。その隙に、宮舘(ノーブル)がラウールと佐久間を引きずり起こした。宮舘の白いシャツは、すでにメンバーの血で汚れている。
「全員、私の後ろへ。ここは私が食い止める」
「ダメだ館さん! 一人で勝てる相手じゃない!」
阿部(ブレイン)がノートPCを叩きながら叫ぶ。カメラの映像から敵の行動パターンを割り出そうとするが、計算式が追いつかない。
全滅。その二文字が、9人の頭をよぎった。
敵は閃光の煙を切り裂き、ゆっくりと歩みを進めてくる。一歩ごとに、圧倒的な死の圧力が楽屋……いや、戦場を支配していく。
その時、通信の向こうで、深澤が深く息を吐く音が聞こえた。
『……お前ら、調子狂うわ。いつからSnow Manは、一人で戦う組織になったんだよ』
深澤の声から、焦りが消えていた。いつもの、頼れる最年長のトーンだった。
『阿部、ホテルのスプリンクラーを強制作動させろ。館さん、その水を全部凍らせるギミック、仕込んであるだろ』
「……あぁ、いつでもいける」宮舘が不敵に微笑む。
『康二、翔太の目になれ。翔太、次の弾、康二の指示通りに撃て。めめ、照、佐久間、ラウ。お前たちの連携なら、神様だって殺せる。ーー行くぞ』
司令塔の号令とともに、阿部がキーを叩いた。
天井から大量の水が降り注ぐ。視界が最悪になったその瞬間、宮舘が床に仕込んだ特殊冷却弾を起動させた。激しい水飛沫が、一瞬にして鋭利な「氷のトゲ」へと変わり、敵の足場を奪う。
「そこや、しょっぴー!!! 3、2、1、撃てぇ!!」
向井の叫びと同時に、渡辺が引き金を引いた。降り注ぐ水滴の軌道、風速、すべてを向井と阿部が計算し、渡辺に伝えた『未来の弾道』。
弾丸は、敵の漆黒のブレードの「根元」を正確に撃ち抜き、武器を破壊した。
「今だっ!!!」
武器を失った敵へ、4人の前線部隊が同時に襲いかかる。
ラウールのワイヤーが敵の左腕を縛り、佐久間のナイフが右腕の腱を切り裂く。
動きを止められた敵の胸元へ、目黒の短刀が深く突き刺さった。
「これで、終わりだ」
最後は、リーダーの拳。
岩本が全身の筋力を乗せた一撃を、敵の顔面へと叩き込んだ。
ドォン!!と重い衝撃音が響き、かつてない強敵だった男が、崩れ落ちるように床に倒れ伏した。
水を打ったように静まり返る最上階。
全員が激しい息を吐きながら、傷だらけの体でお互いを見つめ合った。
『……生きてるか?』
通信の向こうで、深澤がホッとしたように呟く。
「へへ、死ぬかと思ったわ……」
佐久間が目黒の肩に寄りかかりながら笑う。
「ちょっと館さん……ハンバーグ、大盛りにしてね」
ラウールが宮舘の袖を引っ張ると、宮舘は優しくその頭を撫でた。「あぁ、いくらでも食べなさい」
岩本が、ボロボロになった拳を握り直し、空を見上げた。
「帰ろう。俺たちの家に」
コメント
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おお、第2話もアツすぎたわ…🔥 深澤の司令塔っぷりが光る回やったね。一人で戦おうとしてたメンバーを「チーム」に戻したあの声かけ、グッときた。氷のトゲで足場を奪う連携も、脳筋じゃなくて頭脳と個性が噛み合っててめっちゃ好き。ラウールが館さんにハンバーグねだるところも可愛くて、戦闘後の緩急が効いてたわ。続き、早く読みたい🔥