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お姫様ソクジナがただ単に愛される短編集。

第7話 - 第7話　下を向く1

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2022年11月05日

#キムソクジン

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ソクジナ姫を愛してます。

下を向いたことなんて何度もあった。

好きな声が出なくて好きな歌が書けない。そんな時は必ず下を見る。今、自分の手元には何があるか。作詞力、歌唱力、演技力、愛嬌。アイドルとして世に出るためにはどうすれば良いのか。考えたところで正解なんてなくて。自分が立ってるこの地点はアイドルになるための階段を登っているのか降りているのか。それすらも分からない。俺は今日も行き来してる。迷っている。

どうすれば人気になれるか。長男ではない。かといって下でもない。俺の下にはあと五人もいる。こいつらに俺が夢を見せてあげなくちゃ。大きな舞台に立ってペンライトでゆらゆらエールを贈ってくれるファン達に囲まれて。素敵な景色を見させてやるんだ。彼だけにアイツ等の夢を背負わせるわけにはいかない。その為に俺は歌を書き続ける。そんな俺を暗闇の底に落としたのは批判だった。

『こいつの歌、なんかうざくね？wwww』

『ここの歌詞とかマジキモいし』

『上手いと思ってやってんのかなぁ？wwww』

『それなら勘違い乙www』

一部の否定的な言葉。もちろん、肯定的な言葉をかけてくれる人も沢山いた。それの倍以上。それでもその言葉が刺さったのは俺だって人間だから。生きているから。心があるから。画面の向こう側の人はロボットじゃない。いじめだってそうだ。嫌な言葉を言われてなんとも思わない人なんていない。人間なんだから。だからって加害者がすべて悪いとは思わない。いじめられる側も言われる側も対策方法はあったんじゃないか。そういう言葉を『無視する』という決断も出来たはずだ。そんな言葉をいつしか掛けられた思いがあった。そんな簡単に言わないでほしい。沢山悩んで苦しんだ人がいるのに。何も知らないやつに何も言われたくない。

俺は今、息をしている。手足は動く。心臓だってちゃんと仕事をしている。ちっぽけな脳も動いている。俺なりの言葉を探して。息の仕方を学んでいる。それでも上手くいかなくて。また下を向いた。気づけば自分の手元にはもう何も残っていないことに気がつく。そうなってしまってはもう遅い。だから高みを目指して下手くそどもを蹴散らして俺がアイツらをあの人の隣に立って引っ張ってやらなきゃいけないのに。

俺は、ヒョンにはなれない＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

🐰「ユンギヒョン！」

🐱「…ん？なんだ？ジョングガ。」

🐰「目の隈、酷いですよ？ちゃんと寝てますか？ご飯はちゃんとっ、」

🐱「ジョングガ、大丈夫だ……ほっといてくれ…」

🐰「ほっとけませんよ！だってそれっ、」

🐱「お前に何がわかんだよ！！批判食らってもう何も手につかない俺の！何がわかんだよ！！お前みたいな夢見るお子さんによぉ！！」

🐰「何でユンギヒョンにそんなこと言われなきゃいけないんですか！僕だって頑張ってますよ！！そんなっ、そんな簡単にここまで来た訳じゃないのに……」

🐰「もうっ、もうユンギヒョンなんか知りません！！」

悲しそうな弟の背を見つめる。心配している弟に当たって泣かせて。何がしたかったのだろう。そんな弟を追いかけもしない。ただ見つめてるだけ。あの人なら、きっと追いかける。いや、まずこんなことは言わないだろう。どうして俺にはできないの？上手くいかないことだらけ。今気づいた。優しさも心の広さも尊敬心も愛情も。

俺には初めから何もなかったんだ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

🐥「ユン…ギヒョン？大丈夫ですか…？グガ、泣いてどっか行きましたけど……」

🐱「…すまん。ジミナ。今は…一人にさせてくれないか？」

🐥「……はい。」

🐱「……すまんな。」

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部屋は少し冷えていてだけど少し暖かい。途中まで書いた歌詞。それが写るパソコン。この言葉もあの言葉も聞き手には届いていなくて。ただ、俺の中で勝手に良いと勘違いしているだけ。なのにどうして。どうして涙が溢れてしまうのだろう。俺にとってはすごく大切でかけがえのない言葉。なのにどうしてそれが伝わらないのだろう。どうして一人一人違うのだろう。どうして、どうして、どうして。

恋をしてしまったのだろう＿＿＿＿＿＿＿＿＿

『ユンギヤ！』

貴方について書いた歌詞。

大切な人のことを思って書くと何よりも良い作品ができる。

そう貴方が教えてくれたから。

でもこれもきっと否定される。

『気持ち悪い』って笑われる。

そんな覚悟を持った上でこの世界に飛び込んだはずなのに。やっぱりまだ、覚悟が足りなかった？そんなこともわからないのならこの世界に来ない方がよかった？そんなこと言わせない。言われたくない。でも、そんな力、俺は持っていなくて。

また下を向く。

頬に伝う涙は慰めでも同情でもなくて。ただ、俺の心に傷をつけるだけだった。

下を向く1　終わり