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ゆゆゆゆ
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ゆゆゆゆ
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FORSAKENには定期的に発生するイベントがある。
ノスフェラトゥが。
反抗期になる。
もちろん本物ではない。
本人だけが本気である。
その日のラウンジ。
ノスフェラトゥは立ち上がった。
ゆっくりと。
重々しく。
まるで世界の終焉を宣言する魔王のように。
「……決めた」
アズールは紅茶を飲んでいた。
嫌な予感しかしなかった。
「何を」
「今日こそ反逆する」
「ああ」
アズールは即座に理解した。
また始まった。
「主様に口答えする」
「無理だね」
即答だった。
ノスフェラトゥは机を叩いた。
「今回は違う!」
「毎回言ってる」
「今回は本気だ!」
「毎回本気だよね」
「私は覇王だぞ!」
「今は掃除係だろ」
「違う!!」
ラウンジの隅でホスフォラスが笑い始める。
「あははは! また反抗期!?」
「笑うなホスフォラス!」
「何秒持つと思う?」
「僕は二秒」
「一秒」
「アズール酷くない?」
「現実的なだけ」
ノスフェラトゥはマントを翻した。
「見ているがいい」
「うん」
「今日は違う」
「はいはい」
「絶対に屈しない」
「前も聞いた」
「私は自由だ!」
「じゃあ行ってきなよ」
「行ってくる!」
ノスフェラトゥは歩き出した。
無駄に格好よく。
無駄に壮大に。
無駄にBGMが流れていそうな勢いで。
そして。
三分後。
スペクターの執務室。
コンコン。
「失礼する」
扉が開く。
スペクターは机で仕事をしていた。
書類。
山積み。
どう見ても残業中である。
「おや」
顔を上げる。
「ノスフェラトゥ」
その声。
その瞬間。
反射的に膝が曲がりかける。
危ない。
耐えた。
今日は反抗期だ。
反抗期。
忘れるな。
「何か用かい?」
ノスフェラトゥは拳を握る。
ここだ。
今だ。
言うんだ。
反抗しろ。
覇王を思い出せ。
数百年前のお前を。
「私は……!」
スペクターを見る。
美形だった。
無理だった。
いやまだだ。
まだ耐えろ。
「お前の言うことなど……!」
言えた。
あと少し。
あと少しで反抗成功だ。
しかし。
スペクターは少しだけ首を傾げた。
「ん?」
終わった。
全部終わった。
ノスフェラトゥの脳内。
反抗軍壊滅。
覇王討死。
プライド蒸発。
理性撤退。
「…………」
固まる。
スペクターは待つ。
「ノスフェラトゥ?」
追撃。
優しい声。
無理。
完全に無理。
「あうっ」
終わった。
本当に終わった。
「私は!」
「うん」
「私は!」
「うん」
「お部屋の掃除をしてきます!!!!!」
スペクター
「???」
次の瞬間。
ノスフェラトゥが消えた。
残像だけ残った。
シュバッ!!!
取り出される雑巾。
なぜ持っているのかは誰も知らない。
本人も知らない。
気付いたら持っている。
「主様申し訳ございません!」
ゴシゴシゴシゴシ!!
「直立してしまいました!」
ゴシゴシゴシ!!
「反省しております!」
ゴシゴシゴシゴシゴシ!!
「私は掃除虫です!」
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!
デスクが輝き始めた。
怖いくらい輝いた。
もはや新品より綺麗だった。
スペクターはしばらく固まった。
本当に固まった。
反抗しに来たと思った。
掃除が始まった。
意味が分からない。
「……」
ノスフェラトゥは必死だった。
「主様の顔が良すぎる……!」
ゴシゴシ!!
「反抗など無理……!」
ゴシゴシ!!
「首を傾げるの禁止にしてほしい……!」
ゴシゴシ!!
「理性が死ぬ……!」
ゴシゴシ!!
スペクターはとうとう吹き出した。
「ふふっ」
ノスフェラトゥが止まる。
撫でられる期待で。
「君、本当に反抗しに来たのかい?」
「来ました!」
「その結果が掃除?」
「結果が掃除です!」
「なるほど」
全然なるほどではなかった。
スペクターは笑いながら頭を撫でた。
ぽんぽん。
その瞬間。
「あうぅぅっ!」
もう駄目だった。
完全降伏だった。
反抗期終了。
所要時間一・八秒。
史上最速記録更新である。
「じゃあその棚もお願いしようかな」
「喜んでっ!!」
ノスフェラトゥは棚へワープした。
本当にワープした。
廊下の外。
ストップウォッチを持ったアズールが時計を止める。
「一・八秒」
ホスフォラス大爆笑。
「あははははは!!」
「二秒すら持たなかったね」
「『ん?』で死んだ」
「死んだね」
「完全に死んだ」
部屋の中では、
「主様の首の傾きは世界遺産に登録すべきです……!」
と呟きながら超高速で棚を磨くノスフェラトゥ。
反抗期は失敗した。
だが本人は幸せそうだった。
いつも通りである。